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阿部技術士・労働安全コンサルタント事務所は、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。

TEL. 088-694-3482

〒771-1330 徳島県板野郡上板町西分字橋北16番地2

安全情報メモ20Safety information

20)ものづくりの現場で失われたもの

 QC(統計的品質管理)は1920年代後半から1930年代にかけて米国のベル研究所のシューハートにより提唱、創始されました。日本には戦後の1950年前後に導入され、組織的に取り上げられました。
 1960年前後にはSQC(Statistic Quality Control)は発展し、TQC(Total Quality Control)として、ものづくりの現場で磨かれ、日本経済の高度成長期から安定成長期(1954〜1990年)を支えました。1996年にはTQC (Total Quality Control)からTQM (Total Quality Management)へと呼称が変化しましたが、現在まで約90年の歴史があります。 TQCはよいものを安く、多く、速く作るために必要な管理の概念と方法論を広めました。
 TQCはPDCAサイクルを回す、源流管理などの表現で誰でもが理解し、実践できるような形で浸透していきました。  ものづくりの現場ではQCサークルなどの小集団活動が行われ、
 QCサークル本部によりQCサークル活動の基本理念が次のように発表されました。
     人間の能力を発揮し、無限の可能性を引き出す。
     人間性を尊重して、生きがいのある明るい職場をつくる。
     企業の体質改善・発展に寄与する。


 いわゆる高度経済成長期は1954年12月から始まり、1973年11月までの間、実質GNP(当時の指標、その後GDP、現在GNI)は毎年約10%以上増加しました。しかし、1973年、中東戦争による第一次オイルショックの影響を受け、実質GNPの成長率は鈍化しました。 その後、1978年、イラン革命による第二次オイルショックに見舞われましたたが、実質成長率は約4%で右肩上がりに推移しました。このような経済の安定成長はバブル景気崩壊の1990年頃まで続きました。この一連の経済成長は東洋の奇跡と呼ばれています。

 高度経済成長期には国家規模のビッグプロジェクトが次々と計画、実施されました。
例えば、東京タワーは1957年6月に着工し、1958年12月に完成。東海道新幹線は1959年4月に着工し、1964年10月1日に営業運転を開始。その9日後の10月10日には東京オリンピックが開会しています。また、1970年には大阪で万国博覧会も開催されました。

 しかし、今、品質立国日本の地位(相対的)は落ちているのではないでしょうか。例えば、@大学付属病院患者誤認事故 AJCO臨界事故 B地下鉄脱線事故 Cダイオキシン汚染 Dリコール隠し事件 E雪印乳業集団食中毒事件、これらは1999〜2000年の間に起きた事故や不祥事です。10年の時を経て、このような事故や不祥事は無くなったのでしょうか。品質管理学会に限らず、関連の学協会の前向きの努力によってもこのような事故、不祥事の未然防止は実現できていないと言わざるを得ません。技術的に未知なものであれば止むを得ない面もありますが、不注意や、ポカミスのようなものが依然としてあるのは何故でしょうか。また、明らかなコンプライアンス違反に属するものもあるのは何故なのでしょうか。
 このように10年の時を経てもなお、種々の事故やトラブルが発生しています。これらの中には単純な人のエラーが引き金になった事故だけでなく明らかにモラルの欠如と思われる人の行動による犯罪若しくは犯罪まがいのものも含まれており、これらの「恥知らずの面々」の行動には愕然とさせられます。
 
 2000年に失敗学の提唱者である畑村は「失敗体験が真の科学的理解を生む」流れを図1のように表現しました。そして、「ある失敗を次の失敗の防止や成功の種に結びつけるには失敗が起きるに至った原因や経過などを正しく分析した上で、知識化して誰もが使える知識として第三者に情報伝達することが重要なポイントとなる」と指摘しています。
 また、日本品質管理学会の複合技術領域における人間行動研究会では ヒューマンエラーや標準不遵守に起因する事故の未然防止のための従来の方法を整理するとともに、必要に応じて新しい手法の開発を行い、これらをパッケージ化された方法論として体系化することをねらいとして活動し、2002年には最終報告書「人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止のための方法論の体系化」をまとめています。
 これらに共通しているのは失敗(事故やトラブルなど)の本質(真実)を見抜く確かな眼が必要であるという視点ではないでしょうか。IT技術の発展により誰もが簡単に世界中から欲しい情報を手に入れることができるようになりました。この行為は特別に責められるものではありません。しかし、入手した情報を安易に利用することにより生じる弊害があることを忘れてはなりません。本来、知識や経験は努力して、苦労して身につけるべきものです。真偽は元より本質を見抜く努力を怠るとそのつけは自分に返ってくるでしょう。今、正に、組織を構成する個々の知的レベルが試されています。バブル崩壊以降の失われた10年(あるいは20年)の間に、ものづくりの現場で失われた「本質(真実)を追求する意欲」を復活しなければなりません。

 具体例を一つだけ紹介します。
 図2に示すとおり、職場環境は変化しています。そして、ものづくりの現場に導入された高度に自動化された機械設備や製造ラインについていけない作業者がいます。
 高度に自動化されたものづくりの現場の単純な作業で起きている事故やトラブルは単なるヒューマンエラーではないのです。技術者は考え抜いて技術を開発し、機械設備や製造ラインを作り上げます。そして、作業者は技術者の意図を理解し、個々の機械装置を運転します。作業者は個々の機械装置の動作原理を理解していなければ使いこなすことはできません。また、稼働状況を診断したり、トラブル発生時の修復能力も必要です。今、ものづくりの現場で、これらのことができる作業者がどれだけいるでしょうか。
 この状況を打開するために、作業者を入れ替えて終わりにしますか?
 真の解決策は組織の中の個々の知的レベルの向上ではないでしょうか。

当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。

図1.失敗体験が真の科学的理解を生む
(出典:失敗の工学、畑村、機械学会誌、2000)

図2.職場環境の変化
(出典:人間行動に起因する事故・トラブルの未然防止のための方法論の体系化、
 日本品質管理学会 複合技術領域における人間行動研究会、2002)

                                                (2013.6.22)
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