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阿部技術士・労働安全コンサルタント事務所は、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。

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安全情報メモ26Safety information

26)リスクアセスメント(実施時期と対象の選定)

 厚生労働省から発出されている法令、解説などを参考にしながら、リスクアセスメントの実施時期、対象の選定等について紹介します。

 平成17年の労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)の改正により、同法に第28条の2が追加(以下の(参考)に記載)されました。
参考)
 
第28条の2 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、  又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく  命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなけ  ればならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障  害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事  業者に限る。
 2 厚生労働大臣は、前条第1項及び第3項に定めるもののほか、前項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図  るために指針を公表するものとする。

 そして、平成18年3月10日、この第28条の2第2項の規定に基づき、危険性又は有害性等の調査等に関する指針を次のとおり公表しています。
1 名称 危険性又は有害性等の調査等に関する指針
2 趣旨 本指針は、労働安全衛生法第28条の2第1項の規定に基づく措置の基本的な考え方及び実施事項について定めたものであり、その適切かつ有効な実施を図ることにより、事業者による自主的な安全衛生活動への取組を促進することを目的とするものである。
3 内容の閲覧 内容は、厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課及び都道府県労働局労働基準部安全主務課において閲覧に供する。
4 その他 本指針は、平成18年4月1日から適用する。

 
このように平成18年4月から事業者には新たに「危険性又は有害性の特定、リスクの見積りおよびその結果に基づくリスク低減措置の実施」が法令上の努力義務とされています。
 近年、労働災害の原因が多様化し、その把握が困難になっています。これは生産工程に導入された機械設備などが高度化され、複雑になってきたことが原因と思われます。このような状況において事業者は事業場の安全衛生水準の向上を図らなければなりません。即ち、リスクアセスメントの実施は”安全第一(Safety first)”の企業文化を醸成し、事業場の安全衛生水準を向上させるために課せられた法令上の努力義務なのです。

◆本指針の「5 実施時期」には次のように記載されています。
(1)事業者は次のアからオまでに掲げる作業等の時期に調査等を行うものとする。
ア 建設物を設置し、移転し、又は解体するとき。
イ 設備を新規に採用し、又は変更するとき。
ウ 原材料を新規に採用し、又は変更するとき。
エ 作業方法又は作業手順を新規に採用し、又は変更するとき。
オ その他、次に掲げる場合等、事業場におけるリスクに変化が生じ、又は生ずるおそれのあるとき。
 (ア)労働災害が発生した場合であって、過去の調査等の内容に問題がある場合
 (イ)前回の調査等から一定の期間が経過し、機械設備等の経年による劣化、新たな安全衛生に係る知見の集積等があ
    った場合
(2)事業者は(1)のアからエまでに掲げる作業を開始する前に、リスク低減措置を実施することが必要であることに留意するものとする。
(3)事業者は(1)のアからエまでに係る計画を策定するときは、その計画を策定するときにおいても調査等を実施することが望ましい。

◇イの設備には足場等の仮設のものも含まれると共に、設備の変更には設備の配置替えが含まれます。
◇オの「次に掲げる場合等」の「等」には地震等により建設物等に被害が出た場合、もしくは被害が出ている恐れがある場合が含まれます。
◇オの(イ)は定期的に調査等を実施し、それに基づくリスク低減措置を実施することが必要であることから設けられています。「一定の期間」については事業者が設備や作業等の状況を踏まえ決定し、それに基づき計画的に調査等を実施することです。また、「新たな安全衛生に係る知見」とは従前は想定していなかったリスクを明らかにする情報があることです。
◇(3)は計画の段階で調査等を実施することでより効果的なリスク低減措置の実施が可能となることから設けられた規定です。また、計画策定時に調査等を行った後に、(1)の作業等を行う場合、同じ事項に重ねて調査等を実施する必要はありません。
◇既に設置されている建設物等や採用されている作業方法等であって、調査等が実施されていないものに対しては(1)に拘らず計画的に実施することが望ましい。

「6 対象の選定」次のとおり記載されています。
 
事業者は次により調査等の実施対象を選定するものとする。
(1)過去に労働災害が発生した作業、危険な事象が発生した作業等、労働者の就業に係る危険性又は有害性による負傷又は疾病の発生が合理的に予見可能であるものは調査等の対象とすること。
(2)(1)のうち、平坦な通路における歩行等、明らかに軽微な負傷又は疾病しかもたらさないと予想されるものについては調査等の対象から除外して差し支えないこと。


◇(1)の「危険な事象が発生した作業等」の「等」には労働災害を伴わなかった危険な事象(ヒヤリハット事例)のあった作業、労働者が日常不安を感じている作業、過去に事故があった設備等を使用する作業、又は操作が複雑な機械設備等の操作が含まれます。
◇(1)の「合理的に予見可能」とは負傷又は疾病を予見するために十分な検討を行えば、現時点の知見で予見しうることをいいます。
◇(2)の「軽微な負傷又は疾病」とは医師による治療を要しない程度の負傷又は疾病をいいます。また、「明らかに軽微な負傷又は疾病しかもたらさないと予想されるもの」には、過去、たまたま軽微な負傷又は疾病しか発生しなかったものは含まれません。
◇「合理的に予見可能(reasonably foreseeable)」という考え方は英国安全衛生庁等において採用されています。


 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。   (2013.9.2)

                                           

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