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阿部技術士・労働安全コンサルタント事務所は、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。

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安全情報メモ33Safety information

33)農作業事故の未然防止(リスクアセスメントの実施)

 農作業における事故の中には他の産業の労働災害における事故原因「本人の不注意」ではすまされないようなものがあります。規制の対象ではないかもしれませんが、労働安全衛生法や規則を適用した対策を実施することにより農作業事故の未然防止や発生時の重篤化防止に繋がる可能性があるのであれば検討し、参考にすべきと考えます。 
 
    平成17年の労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)の改正により、同法に第28条の2が追加(以下の(参考)に
    記載)されました。
   (参考)
    
第28条の2 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等に
    よる、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこ
    れに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずる
    ように努めなければならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働
    者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令
    で定める業種に属する事業者に限る。
    2 厚生労働大臣は、前条第1項及び第3項に定めるもののほか、前項の措置に関して、その適切かつ有効な実
    施を図るために指針を公表するものとする。
    そして、平成18年3月10日、この第28条の2第2項の規定に基づき、危険性又は有害性等の調査等に関する指
    針を次のとおり公表しています。
    1 名称 危険性又は有害性等の調査等に関する指針
    2 趣旨 本指針は、労働安全衛生法第28条の2第1項の規定に基づく措置の基本的な考え方及び実施事項に
    ついて定めたものであり、その適切かつ有効な実施を図ることにより、事業者による自主的な安全衛生活動への
    取組を促進することを目的とするものである。
    3 内容の閲覧 内容は、厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課及び都道府県労働局労働基準部安全主務課に
    おいて閲覧に供する。
    4 その他 本指針は、平成18年4月1日から適用する。
 
   このように平成18年4月から事業者には新たに「危険性又は有害性の特定、リスクの見積りおよびその
   結果に基づくリスク低減措置の実施」が法令上の努力義務とされています。

 ここでは、農作業事故の未然防止のために有効と考えるリスクアセスメントの実施手順について紹介します。その他の詳細については安全情報メモ25〜30に記載しています。

T.農作業死亡事故の現状
 図1は平成23年度 農林水産省補助事業 農作業安全推進体制緊急整備事業「農作業事故の対面調査事業」結果報告書 『こうして起こった農作業事故』に収載されている労災予防研究所(三廻部眞己)の作成資料です。産業別の死亡者の推移が示されています。

図1.産業別・死亡者の推移
(出典:「農作業事故の対面調査事業」   結果報告書
   『こうして起こった農作業事故』)

 日本の農作業による死亡者数は1971年の364人を100として、2011年は366人(100.5%)となっており、毎年400人前後とほとんど変化がありません。一方、農作業事故を除く他の労働災害による死亡者数は1971年の5,552人から2011年には1,024人(18.4%, 東日本大震災関係除外)に減少しています。特に、危険を伴う建設業では1971年の2,323人から2011年には342人(14.7%, 東日本大震災関係除外)まで減少しています。
 図2は同報告書に記載されている農機災害における2002年から2011年までの死亡者数を機種別に集計したものです。トラクターによる死亡者が約半数を占めています。また、刈払機(動力式の草刈り機)は手軽に使用できる利便性はあるものの、死亡を含む多くの災害が発生しており、注意が必要です。

図2.農機災害・
農業機械別死亡者数(2002〜2011年)
(出典:「農作業事故の対面調査事業」
結果報告書
『こうして起こった農作業事故』)


 図3は図2のデータを基にして当事務所でパレート分析したものです。  

図3.農作業死亡事故・起因物
パレート分析 (2002〜2011年)
(図2のデータを基に当事務所で作成)

 
U.労働安全衛生法におけるリスクアセスメントの実施手順
 リスクアセスメントについては、 厚生労働省から「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」を基本指針として、 「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」、「機械の包括的な安全基準に関する指針」が基本指針に基づく詳細指針として、それぞれ公表されています。 いずれの指針においても、リスクアセスメントの実施手順等の基本は共通していて、図4に示すとおりとなっています。

図4.リスクアセスメント実施手順
(出典:安全の指標)


V.労働安全衛生法におけるリスク低減措置の検討
 リスク低減のための優先度はリスクレベルの高い順に設定することになります。 リスク低減措置の内容は図5の優先順位に従って検討します。

図5.リスク低減措置の検討
(出典:安全の指標)

 検討に際しては、次の点に留意が必要です。
@)法令に定められている事項は確実に措置を講じなければならない。
A)安易にBの管理的対策やCの個人用保護具の使用に頼るのではなく、
  @の危険な作業の廃止・変更等およびAの工学的対策をまず検討し、BおよびCはその補完的 措置と考える。
  BおよびCのみの措置とするのは、@およびAの措置を講じることが困難でやむを得ない場合の措置となる。
B)死亡災害や重篤な疾病をもたらすおそれのある場合であって、適切なリスク低減措置を講じるのに時間を要する場合
 は、そのまま放置することなく、暫定的な措置を直ちに講じる必要がある。
C)措置を講じることにより新たなリスクが生じる場合もあるので、措置を講じた後のリスクも見積もり、講じる措置の
 有効性や改善効果を確認する。

 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。  (2013.10.4)

                                           

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