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安全情報メモ79Safety information

79)事業継続マネジメントシステム(第1回)-リスクマネジメント規定化の経緯-

始めに、リスクマネジメントシステム規定化の経緯を整理してみます。
1)阪神・淡路大震災を契機として、
1995年10月に「危機管理システム規格検討委員会」が設置され、危機管理システムに関する調査研究が始まり、ISO9000(品質システム)や ISO14000(環境マネジメントシステム)と同様の「システム規格」を目指しました。
2)
1998年4月から、委員会は「リスクマネジメントシステム規格委員会」に改組され、「危機管理システム」は「リスクマネジメントシステム」に呼称変更されました。
3)「危機管理(クライシスマネジメント)はリスクマネジメントに含まれる」ものとして、リスクマネジメントという用語で統一され、リスクマネジメントシステム規格は
2001年にJIS規格として制定されました。
4)
2009年11月、ISO31000 がISOにより公表されたため、国内でもこの規格をベースに、JISQ31000 の審議が始まり、2010年9月、JISQ31000「リス クマネジメント―原則及び指針」が発行されました。これに伴い、JISQ2001 は廃止され、 JISQ31000に移行しました。
5)
2013年10月21日、経済産業省は、「事業継続計画(BCP)を運用するマネジメント体制における要求事項を定めた国際規格ISO22301(事業継続マネジメントシステム)」、「危機対応時のマネジメントの要求事項を定めたISO22320」及び社会セキュリティの用語の国際規格であるISO22300」の三つの規格を日本工業規格として制定しました。
6)
2019年1月21日、経営者による経営目的に沿ったリスクの運用と管理を目指し、リスクマネジメントの指針に関するJIS改正が行われました。
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 今回(2019年1月21日)の改正について、経済産業省のホームページには次のように記載されています。
 
社会が高度化・複雑化すると、ある組織内で組織の活動における問題が生じた場合において、その影響の大きさや影響の及ぶ範囲も大きくなり、潜在するリスクも大きくなっていきます。そのため、これまでのように失敗に学びつつ現場の管理技術を改善していくという仕組みだけでは、健全な経営を行うことが難しくなります。
 JIS Q31000は、リスクマネジメントについて、あらゆる業態及びあらゆる規模の組織において、リスクに対する最適な対応を行うための指針を示すものであり、あらかじめ目的を設定し、これを達成するために、組織の意思を決定し、パフォーマンスを改善することで、組織における価値を創出し保護するための活動として規定しています。
 今回の改正では、これまでの“担当者による個別のリスク管理”から “経営者による経営目的に沿ったリスクマネジメント”を目指す指針としました。この改正により、各組織においてより効果的なリスクマネジメントが行われることが期待されます。

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 ISOでは、品質、環境、安全及び内部統制等のマネジメントシステムが制定されています。既に導入している組織も多いのではないでしょうか。
 近年、これらの個別の課題に対して制定されたマネジメントシステム規格においてリスクマネジメントの考え方が取り入れられるようになりました。しかし、用語や定義などが異なるため、規格間の整合性がとりにくいという問題がありました。そこで、ISOでは整合性を高めるための議論を行い、2012年2月にISOマネジメントシステム規格共通要素を承認し、それ以降制定あるいは改定されるすべてのISOマネジメントシステム規格は、原則としてこの共通要素を採用して開発することが義務づけられました。これにより、複数のISOマネジメントシステム規格を導入・利用する組織にとっては、それらを統合して運用することが容易になりました。
 リスクマネジメントの考え方をどのように取り入れるかはそれぞれの組織において特徴があるようです。例えば、内閣府防災担当が作成した事業継続ガイドラインではリスクマネジメントが事業継続より上位に、また、中小企業庁の作成した中小企業BCP策定運用指針では事業継続がリスクマネジメントより上位にあるように読み取れます。
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 今回のJIS改正の主な改正点は、次のとおりです。以下は、経済産業省ホームページから引用したものです。
(1)統合を意識したPDCAサイクルに リスクマネジメントの枠組みにおいて、PDCAの運用による継続的改善を求めていましたが、 PDCAの中に“統合(*2)”を評価する段階を加え、そのサイクルを組織のトップによる“リーダ ーシップ及びコミットメント”により統治する規定に変更しました(図1)。
  *2リスクマネジメントと組織のあらゆる活動とが、乖離していない状況
(2)“価値の創出及び保護”を中心に位置付け リスクマネジメントの原則について、
 “価値の創出及び保護”をリスクマネジメントの意義と して中心的概念に位置付け、その周囲に、八つの原則を展開する構造としました。 (図2)
(3)効果的なリスクアセスメント リスクアセスメントを効果的に行うために、“基準”と“記録作成及び報告”を追加しまし た。さらに、リスクアセスメント及びリスク対応などの各項目も、実施する際にわかりやすい 記述に変更しました。


図1.リーダーシップ及びコミットメント
図2.価値の創出及び保護

(出典:2019年1月21日、経済産業省ホームページのJIS改正に関わる公表資料より引用)


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  自然災害が発生したとき人工物が自然のエネルギーに耐え切れず大きな災害となることがあります。2011年 3月11日に発生した東日本大震災による災害もそれです。英知を結集して設計製作していたはずの原子力発電所が一瞬にして破壊されてしまいました。想定外の規模であったということだけで片付けられるでしょうか。  想定外の事象にどのように対応すべきか。過去の津波で被災した地域に残されていた石碑には「(略)此処より下に家を建てるな」の言葉が残されていました。科学技術の進歩は安全で安心して暮らせる家屋や道路・橋梁などのインフラを整備、実現してきましたが、その多くが、想定を超えた自然の脅威には無力でした。想定内と想定外の境界をどのように設定すべきかは極めて重要な作業になります。
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 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。  (2020.3.17)

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