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阿部技術士・労働安全コンサルタント事務所は、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。

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技術情報メモ37Technical information

37)機械材料学(材料の力学的挙動)

 技術には危険がつきものです。このため、危険源を特定し、可能な限りリスクを減らすことによって、その技術の恩恵を受けることが可能となります。

 例えば、自動車の登場は蒸気自動車が1769年、ガソリン自動車が1870年(内燃機関によるものでは1885年にそれぞれ発明したダイムラーとベンツによるものが最初)とされています。航空機は1903年にライト兄弟により初飛行が行われました。また、原子力発電は1951年にアメリカで初めて行われました。原子力発電については世界中で存続の是非が問われていますが、自動車と航空機については無くてはならないものになっています。それ故、今日まで、安全性向上のための技術開発等、不断の努力が続けられているのです。

 機械工学はこれらの技術開発・改良に欠くことのできない学問です。特に、材料力学は機械や構造物が安全に運用されるための基礎となる学問です。材料力学の知識なしに設計された機械や構造物は危険源の塊かも知れません。
 それでは、そのような不安を解消するためにはどのようにすればよいのでしょうか。答えは簡単です。最適な材料を選択し、合理的な安全率を見込んだ設計をすればよいのです。最適な材料を選択するためには材料の力学的特性を知らなければなりませんが、力学的特性はJIS規格で定められた材料試験を行うことによって得られます。材料試験には引張、圧縮、ねじり、曲げ、衝撃などがあります。

 ここでは外力に対する材料の変形並びに破壊に関する力学的挙動について紹介します。

1)変形
 外力に対する材料の変形は次のように分類できます。
 @弾性変形:物体に外力が作用すると同時に外力の方向にその力に応じた量の変形を生じ、外力を除去すると同時に原
  形に回復する性質を有しています。なお、 外力が一定であれば、ひずみも一定であり、 外力を除去すると同時にひ
  ずみも消失し、永久的な変形が残ることはありません。
 A塑性変形:物体に外力が作用すると同時に外力の方向にその力に応じた量の変形を生じ、外力を除去しても原形には
  回復しない(永久的な変形が残存)性質を有しています。
 B粘性変形:物体に外力が作用すると時間の経過と共に変形し、外力を除去すると原形付近までは回復するが、原形に
  は戻らず永久的な変形が残る性質を有しています。
 
 材料の強さとは「その材料に外力が作用したとき、材料が破壊するまでに耐えられる極限の強さ」を意味することが多いのですが、材料の塑性変形に対する抵抗も材料の強さであることは論を俟ちません。

 例えば、金属材料は細かな粒子状の結晶が集合したものです。それぞれの粒子は一定の原子配列をした結晶構造を有する結晶粒からなっています。そして、各結晶粒は方位が異なるので、結晶粒の境界には結晶粒界ができます。写真1は単結晶なので、結晶粒界はありませんが、写真2は多結晶のため結晶粒界が存在しています。
 多くの金属材料はせん断応力が臨界せん断応力を超えると降伏して、塑性変形します(図1)。この塑性変形は材料内部の欠陥が原因で生じています。この材料内部に存在する一次元欠陥(転位と呼びます)が材料内部を移動することにより材料を塑性変形させているのです。しかし、この転位は材料内部の特定の結晶面(すべり面)しか移動できません。このすべり面とすべり方向をすべり系と呼び、各結晶構造ごとにすべり面、すべり方向、すべり系の数が調べられています。通常の金属材料の転位密度は10p/p程度ですが、この初期の転位が、せん断応力を受けて、材料内部で増殖することにより塑性変形が進むことも明らかになっています。

2)破壊
 破壊とは物体が外力の作用により二つ以上の部分に分離する現象のことです。機械の部材が破壊した場合は決定的なダメージを与えてしまうことがあるので、破壊の未然防止については変形以上に注意しなければなりません。
 材料が破壊する場合、破壊面全体が同時に破壊するわけではありません。破壊面の一部にクラック(割れ目)が発生し、このクラックが成長し、破壊面全体に拡大することにより二つ以上の部分に分離(破壊)するのです。
 ここでは、破壊の形式をいくつかの観点から分類したものを紹介します。(1)[ (1)機械材料の基礎(美馬、長谷川) ]
(1)破壊が起こるまでに生じる塑性変形量によりーーー延性破壊、脆性破壊
(2)外力の作用の仕方によりーーー静的破壊、衝撃破壊、疲労破壊、クリープ破壊
(3)多結晶材料における破断箇所によりーーー結晶粒内破壊、結晶粒界破壊
(4)破壊面の結晶学的方位によりーーーへき開破壊、せん断型破壊
(5)破壊面の外観によりーーー粒状破壊、せん断破壊、繊維状破

 例えば、疲労破壊は巨視的な塑性変形を示さず、脆性破壊に類似しているようですが、その破壊面は極めて特徴のある様子を示しています。典型的な例を紹介します。図2は回転曲げ疲労試験機です。図3はこの試験機により得られた疲労破壊面のスケッチです。ある一点(クラック発生点)から始まって拡大する貝殻模様部と非常に荒い凹凸を示す最終破断部の二つの部分に分けられます。貝殻模様部は疲労破面の特徴です。貝殻の模様は疲労クラックが外力の繰り返し数の増加と共に徐々に成長した痕跡です。残りの最終破断部は破壊の寸前に疲労クラックが非常に速く進行した部分です。

 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2013.8.26)
 

写真1      
アルミニウム単結晶
のすべり線

出典:機械材料の基礎 (美馬、長谷川)

写真2                  
極軟鋼多結晶のすべり線

出典:機械材料の基礎 (美馬、長谷川)
    

図1      
応力-ひずみ線図

軟鋼の応力-ひずみ線図を示しています。
    

図2                
回転曲げ疲労試験機

出典:日本材料学会web資料

図3      
回転曲げ疲労破面のスケッチ

出典:機械材料の基礎 (美馬、長谷川)
    
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