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技術情報メモ7Technical information

7)機械遺産32・札幌市時計台の時計装置

 日本機械学会は2007年6月7日に創立110周年を迎えました。その記念事業の一環として日本国内の機械技術面において歴史的に意義のある機械遺産の認定事業を始めました。札幌市時計台の時計装置も認定されています。機械遺産は現在までに55件が認定されています。詳細は日本機械学会のホームページ http://www.jsme.or.jp/kikaiisan/をご覧ください。

札幌市時計台

2012年8月11日撮影      
    
 札幌市時計台の正式名称は「旧札幌農学校演武場」と言い、1878年に建設されました。演武場建設はクラーク博士の構想によるものでした。クラーク博士は1976年に米国マサチューセッツ農科大学学長から札幌農学校の初代教頭として赴任されました。8か月余りの滞在でしたが、学問のみならずキリスト教を基礎とした人間教育にウェイトを置き、有名な言葉「Boys be ambitious」を残しています。
札幌農学校からは宮部金吾、新渡戸稲造、内村鑑三など、近代日本を代表する多くの思想家、教育者、研究者、技術者が輩出されています。
 演武場はクラーク博士の構想を引き継いだ2代目の教頭W.ホイラーが基本構想図を描き、開拓使工業局主席技術者の安達善幸が設計したものです。演武場は1878年10月16日に完成しましたが、時計台は無く、時を告げる小さな鐘楼が付いているだけでした。時計台の設置は完成の式典に出席していた開拓庁長官黒田清隆の発案によるものでした。
 時計台の時計装置は「時打四面重錘式塔時計」と言い、重りで動かしています。重りは運針用と打錘用の二種類です。運針用は約50kgの小石が、打錘用は約150kgの玉石が、それぞれ箱に入り、所定の位置に固定されています。
 時計装置の製作は米国のエドワード・ハワードによるもので、製造番号は「738」です。この時計装置の特徴は次のとおりです。
 @円筒に巻かれたワイヤー先端の重りが重力で降下するにつれて円筒の回転が起こる。
 A調速機の振り子の振幅が小さいため周期誤差が小さい。また、振り球の重量が大きいため慣性モーメントが大きくな
  り外乱の影響を受け難い。
 B直進式脱進機により往復運動を一方向の回転運動に変換すると同時に往復運動を維持するためのエネルギーを与えて
  いる。
 C保力器(メンテニングパワー)により重りの巻き上げ中にも輪列にトルクが与えられるため、時計を止める必要が無
  い。
 この時計装置のメンテナンスは1933年から市内に住む時計技術者井上清さんが行っていました。現在は引き継いだ息子の和雄さんが「誤差は進み10秒まで」を目標にメンテナンスを続けています。現代のクォーツ時計と精度を競うのは意味のない話ではありますが、この地には時計台に通うことを最優先に生活をしている技術者がいます。日本のものづくりの衰退を懸念する声が溢れていますが、日本のいたるところに井上さんのような技術者がいることを信じています。嘘をついたり、隠したりすることなく、自分の仕事を誇りをもって全うするそのような生き方こそ技術者の理想の姿ではないでしょうか。

                                                (2013.2.8)
                                           

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