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阿部技術士・労働安全コンサルタント事務所は、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。

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〒771-1330 徳島県板野郡上板町西分字橋北16番地2

トピックス詳細15Topics detail

15)フードディフェンス(食品防御)

 フードディフェンス(食品防御)」への関心が高まっています。
 2013年12月29日、マルハニチロホールディングスのグループ、アクリフーズの群馬工場で農薬混入事件が発生しました。報道によると、群馬工場で作られたミックスピザについて「石油のような臭いがする」と消費者から最初に問い合わせがあったのは2013年11月13日とのことなので、農薬検出と自主回収の発表まで1カ月半ほどかかっています。一連の流れをみると、事件公表の遅れや待遇への不満による内部犯行など、6年前の中国製ギョーザ中毒事件と多くの類似点があります。今回の事件は、ギョーザ中毒事件を起こした中国に限らず、日本国内の企業であっても悪意を持った意図的な異物混入から食品を守るための態勢が弱いことを露呈しました。

 結果的に、悪意による農薬の混入を防ぐことができなかったアクリフーズの群馬工場ですが、多くの食品工場で、同様のリスクを抱えていると思われます。2009年7月28日、内閣府国民生活局は「フードチェーンにおける安全性確保に関する食品産業事業者アンケート調査結果(概要)」を発表しました。
   調査の目的は次のとおりです。
    冷凍食品への許容値を大幅に越える農薬混入事件の発生など従来の食品安全確保の体制では対応が難しい状況が
    発生している。こうした中、食品防御という考え方が示されている。本調査は、農家、畜産農家、漁業関係者、
    食品製造業、卸売・小売業、飲食店に加えて倉庫業、運送業も対象としてフードチェーンに関わる全ての分野の
    食品関連産業の事業者に対して最大規模の郵送アンケート調査を実施するとともに、他の事業者の参考になるよ
    うな先進的対応をしている事業者を対象に面接調査を行うことにより、国内の民間事業者の食に対する意識と食
    品安全・食品防御への対応状況およびその課題を分析し、今後、事業者、食品関連事業者団体、行政が取るべき
    対応策を検討する上で参考データとすることを目的としている。

   主要な調査項目は次の4項目です。
    
1. 食に対する事業者の意識
    2. 食の安全に対する取組状況
    3. フードディフェンスに対する意識と取組状況
    4. 食品の安全性確保に向けた行政、消費者、事業者の役割と今後の課題

   詳細は(http://www.consumer.go.jp/seisaku/caa/kokusai/file/foodchain/00_press090728.pdf)に掲載さ
   れています。

  調査結果のポイント(p.3)は次のとおり記載されています。
   
・食品の意図的汚染の可能性は、従業員規模が大きい方ほど感じている(「300人以上」で83.5%)が、倉庫業
    や、小売業でも小規模事業者の多い飲料小売業や食料品小売業などでは可能性がないと感じている(それぞれ
    64.7%、62.5%、62.2%)(問15)。
   ・意図的汚染防御の取組は情報交換・情報共有などでも2〜3割程度に止まっており、意図的混入事件発生の可
    能性が高いと感じる社でも「持込み」や「施設」や「空調」へのアクセスの制限などの措置は進んでいない  
    (15.2%、12.8%、5.7%、全体では11.2%、9.8%、5.2%)(問17)。また、実際の事件発生時を想定した対応
    について、同じく事件発生の可能性が高いと感じる社でも、即座の出荷停止措置が取れる社は43.7%に過ぎず 
    (全体では35.5%)、回収基準やマニュアル整備などは1割前後に止まっている(問18)。          
   ・欧米で法律上、義務化されている食品の受取・発送記録の整備・保存などについて、「対応済みもしくは整備意
    向あり」は、製造業および運輸・倉庫業に多く(それぞれ39.2%、45.5%)、小売業や飲食店では少ない(それ
    ぞれ13.0%、11.4%)(問22)。
   ・こうした中、コストをかけてまで対応しなくてよいと考える社は一部に止まっているものの(4.7%)、小規模
    事業者を中心に「現状で十分」との意見が多い(29.8%)。一方、意図的混入事件発生の可能性が高いと感じ
    る社では「コストがある程度かかっても徹底したいが、採算が合わないため、徹底まではできない」(38.4%)
    などコストがネックであるとの意見が多い(問20)。
   ・ヒアリングの中ではフードディフェンスという観点から食品の安全を見た場合、完全に防御する事は不可能と
    する事業者が多かった。フードディフェンスの具体的な対応策としては、内外に向けた「監視カメラ」、「入出
    場時のチェック」、「施錠管理」、「コミュニケーションによる信頼関係の構築」などが挙げられ、“セキュリ
    ティ”と“コミュニケーション”との2面から対応することが重要との認識を示す事業者が多い。なお、欧米型の
    食品追跡・遡及制度の我が国への導入については、このレベルまでは最低限やるべきなど、賛成意見が多数であ
    った。

 
 一方、米国におけるフードディフェンスへの取り組みは、2001年9月11日の同時多発テロや、炭疽菌を使ったバイオテロを機に広がり、政府主導で進められています。そして、バイオテロ法(公衆の健康安全保障ならびにバイオテロへの準備および対策法:The Public Health Security and Bioterrorism Preparedness and Response Act of 2002)が、2003年12月12日に施行されました。この法律により、食品関連施設の登録、輸入時の事前通告、記録の保存、行政による留置が義務付けられました。さらに、2011年1月4日に制定された食品安全強化法(Food Safety Modernization Act)により、バイオテロ法の義務要件の一部が改正されました。

 FDAでは、フードディフェンスに対する取り組みとして「ALERT」と「FIRST」というプログラムがあります。
「ALERT」は企業マネージャーへの認知度向上に活用、また、「FIRST」は従業員教育の推進に活用されています。

ALERT]
A(Assure):保証 (原材料や供給品が安全であることをどのように保証するか?)
  How do you ASSURE that the supplies and ingredients you use are from safe and secure sources?
L(Look):注意・監視 (施設内の製品や原材料の安全性についてどのように注意を払うか?)
  How do you LOOK after the security of the products and ingredients in your facility?
E(Employee):従業員 (施設内の雇用者や施設に出入りする人について身元(バックグランド)を 確認しているか?)
  What do you know about your EMPLOYEES and people coming in and out of your facility?
R(Report):報告書 (管理している製品の安全性について報告することができるか?)
  Could you provide REPORTS about the security of your products while under your control?
T(Threat):脅威 (挙動不審など施設内に食品の脅威や問題があるときの対処(警察への 通報など)の手順が明確化さ
          れているか?)
  What do you do and who do you notify if you have a THREATor issue at your facility, including suspicious    behavior?

FIRST
F(Follow) 会社のルールや手順に従うこと
  Follow company food defense plan and procedures.
I(Inspect) 施設やその周辺を調査すること
  Inspect your work area and surrounding areas.
R(recognize) いつもと何か変わった点を見逃さず認識すること
  Recognize anything out of the ordinary.
S(Secure) 全ての原料、製品の安全を確保すること
  Secure all ingredients, supplies, and finished product.
T(Tell) 何か異変や不審者に気づいたら上長に報告すること
  Tell management if you notice anything unusual or suspicious.

このような事件が発生すると、性悪説(荀子)や性善説(孟子)をもちだして、議論をすることがあります。ここでは、性悪説や性善説について論ずることは差し控えますが、相互に監視したり、内部告発しやすい体制つくりは事件や事故の未然防止、再発防止には有効な手段と考えます。しかし、製造現場でやるべきことをやらずして性悪説だけで片付けてしまうと本質が見えなくなるので、注意が必要です。

 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。  (2014.2.10)
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