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安全情報メモ25Safety information

25)リスクアセスメント(実施内容と実施体制等)

 厚生労働省から発出されている法令、解説などを参考にしながら、リスクアセスメントの趣旨、実施内容、実施体制等について紹介します。

 平成17年の労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)の改正により、同法に第28条の2が追加(以下の(参考)に記載)されました。
参考)
 
第28条の2 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、  又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく  命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなけ  ればならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障  害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事  業者に限る。
 2 厚生労働大臣は、前条第1項及び第3項に定めるもののほか、前項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図  るために指針を公表するものとする。

 そして、平成18年3月10日、この第28条の2第2項の規定に基づき、危険性又は有害性等の調査等に関する指針を次のとおり公表しています。
1 名称 危険性又は有害性等の調査等に関する指針
2 趣旨 本指針は、労働安全衛生法第28条の2第1項の規定に基づく措置の基本的な考え方及び実施事項について定めたものであり、その適切かつ有効な実施を図ることにより、事業者による自主的な安全衛生活動への取組を促進することを目的とするものである。
3 内容の閲覧 内容は、厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課及び都道府県労働局労働基準部安全主務課において閲覧に供する。
4 その他 本指針は、平成18年4月1日から適用する。

 
このように平成18年4月から事業者には新たに「危険性又は有害性の特定、リスクの見積りおよびその結果に基づくリスク低減措置の実施」が法令上の努力義務とされています。
 近年、労働災害の原因が多様化し、その把握が困難になっています。これは生産工程に導入された機械設備などが高度化され、複雑になってきたことが原因と思われます。このような状況において事業者は事業場の安全衛生水準の向上を図らなければなりません。即ち、リスクアセスメントの実施は”安全第一(Safety first)”の企業文化を醸成し、事業場の安全衛生水準を向上させるために課せられた法令上の努力義務なのです。
 
◆本指針の「1 趣旨等」には次のように記載されています。
 
(略)  
 このような現状において、事業場の安全衛生水準の向上を図っていくため、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第28条の2第1項において、労働安全衛生法関係法令に規定される最低基準としての危害防止基準を遵守するだけでなく、事業者が自主的に個々の事業場の建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等の調査(以下単に「調査」という。)を実施し、その結果に基づいて労働者の危険又は健康障害を防止するための必要な措置を講ずることが事業者の努力義務として規定されている。
 (略)

◇本指針は平成17年12月に作成された「労働安全衛生分野のリスクアセスメントに関する専門家検討会報告書」(座長:向殿政男 明治大学教授)を踏まえて策定されたものです。
◇リスクアセスメントについては厚生労働省から「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」を基本指針として、「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」、「機械の包括的な安全基準に関する指針」が基本指針に基づく詳細指針として、それぞれ公表されています。いずれの指針においても、リスクアセスメントの実施手順等の基本は共通していて、図1に示すとおりです。
◇本指針は「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」(平成11年労働省告示第53号)に定める危険性又は有害性等の調査及び実施事項の特定の具体的実施事項としても位置付けられています。

「2 適用範囲」次のとおり記載されています。
 
本指針は建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性(以下単に「危険性又は有害性」という。)であって、労働者の就業に係るすべてのものを対象とする。

◇ここで、「危険性又は有害性」とは労働者に負傷又は疾病を生じさせる潜在的な根源であり、ISO、ILO等においては「ハザード(hazard)」で表現されています。
図2は危険性・有害性(ハザード)とリスクの違いを簡潔に表現したものです。トラは危険性を有しているためハザードにあたります。しかし、周辺には人がいないので、トラに襲われる危険性はありません。即ち、ハザードはあるが、リスクはない状態です。この状態のまま、人が接近するとリスクは高まってきます。接近するのであれば、リスク低減措置を講ずる必要があります。

◆そして、「3 実施内容」は次のとおり記載されています。  
 
事業者は、調査及びその結果に基づく措置(以下「調査等」という。)として、次に掲げる事項を実施するものとする。(1)労働者の就業に係る危険性又は有害性の特定
(2)(1)により特定された危険性又は有害性によって生ずるおそれのある負傷又は疾病の重篤度及び発生する可能性の度合(以下「リスク」という。)の見積り
(3)(2)の見積りに基づくリスクを低減するための優先度の設定及びリスクを低減するための措置(以下「リスク低減措置」という。)内容の検討
(4)(3)の優先度に対応したリスク低減措置の実施


◇ここで、リスクアセスメント(調査)は(1)から(3)であり、(4)は調査結果に基づく措置の実施とされています。リスクアセスメントの範囲については諸説あるようです。また、「危険性又は有害性の特定」は、ISO等においては「危険源の同定(hazard identification)」で表現されています。

◆また、「4 実施体制等」は次のとおり記載されています。
(1)事業者は、次に掲げる体制で調査等を実施するものとする。
ア 総括安全衛生管理者等、事業の実施を統括管理する者(事業場トップ)に調査等の実施を統括管理させること。
イ 事業場の安全管理者、衛生管理者等に調査等の実施を管理させること。
ウ 安全衛生委員会等(安全衛生委員会、安全委員会又は衛生委員会をいう。)の活用等を通じ、労働者を参画させること。
エ 調査等の実施に当たっては、作業内容を詳しく把握している職長等に危険性又は有害性の特定、リスクの見積り、リスク低減措置の検討を行わせるように努めること。
オ 機械設備等に係る調査等の実施に当たっては、当該機械設備等に専門的な知識を有する者を参画させるように努めること。
(2)事業者は、(1)で定める者に対し、調査等を実施するために必要な教育を実施するものとする。


◇「事業の実施を統括管理する者」には総括安全衛生管理者、統括安全衛生責任者が含まれています。また、総括安全衛生管理者等の選任義務のない事業場においては事業場を実質的に統括管理する者が含まれます
◇「安全管理者、衛生管理者等」の「等」には安全衛生推進者が含まれます。
◇「安全衛生委員会等の活用等」には、安全衛生委員会の設置義務のない事業場において実施される関係労働者の意見聴取の機会を活用することが含まれます。また、安全衛生委員会等の活用等を通じ、調査等の結果を労働者に周知する必要があります。
◇「職長等」とは、職長のほか、班長、組長、係長等の作業中の労働者を直接指導又は監督する者が該当します。
◇調査等の実施に関し、専門的な知識を必要とする場合には外部のコンサルタントの助力を得ることも差し支えありません。

 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。   (2013.9.2)

図1.リスクアセスメントの 
基本的な実施手順

(出典:安全の指標
 (中央労働災害防止協会編))

図2.ハザードとリスクの違い
(出典:リスクアセスメント担当者養成研修テキスト(日本労働安全衛生コンサルタント会)

                                           

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