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阿部技術士・労働安全コンサルタント事務所は、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。

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安全情報メモ27Safety information

27)リスクアセスメント(情報の入手)

 厚生労働省から発出されている法令、解説などを参考にしながら、リスクアセスメントの情報の入手等について紹介します。

 平成17年の労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)の改正により、同法に第28条の2が追加(以下の(参考)に記載)されました。
参考)
 
第28条の2 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、  又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく  命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなけ  ればならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障  害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事  業者に限る。
 2 厚生労働大臣は、前条第1項及び第3項に定めるもののほか、前項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図  るために指針を公表するものとする。

 そして、平成18年3月10日、この第28条の2第2項の規定に基づき、危険性又は有害性等の調査等に関する指針を次のとおり公表しています。
1 名称 危険性又は有害性等の調査等に関する指針
2 趣旨 本指針は、労働安全衛生法第28条の2第1項の規定に基づく措置の基本的な考え方及び実施事項について定めたものであり、その適切かつ有効な実施を図ることにより、事業者による自主的な安全衛生活動への取組を促進することを目的とするものである。
3 内容の閲覧 内容は、厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課及び都道府県労働局労働基準部安全主務課において閲覧に供する。
4 その他 本指針は、平成18年4月1日から適用する。

 
このように平成18年4月から事業者には新たに「危険性又は有害性の特定、リスクの見積りおよびその結果に基づくリスク低減措置の実施」が法令上の努力義務とされています。
 近年、労働災害の原因が多様化し、その把握が困難になっています。これは生産工程に導入された機械設備などが高度化され、複雑になってきたことが原因と思われます。このような状況において事業者は事業場の安全衛生水準の向上を図らなければなりません。即ち、リスクアセスメントの実施は”安全第一(Safety first)”の企業文化を醸成し、事業場の安全衛生水準を向上させるために課せられた法令上の努力義務なのです。

◆本指針の「7 情報の入手」には次のように記載されています。
(1)事業者は調査等の実施に当たり、次に掲げる資料等を入手し、その情報を活用するものとする。入手に当たっては現場の実態を踏まえ、定常的な作業に係る資料等のみならず、非定常作業に係る資料等も含めるものとする。
ア 作業標準、作業手順書等
イ 仕様書、化学物質等安全データシート(MSDS)等、使用する機械設備、材料等に係る危険性又は有害性に関する情報
ウ 機械設備等のレイアウト等、作業の周辺の環境に関する情報
エ 作業環境測定結果等
オ 混在作業による危険性等、複数の事業者が同一の場所で作業を実施状況に関する情報
カ 災害事例、災害統計等
キ その他、調査等の実施に当たり参考となる資料等
(2)事業者は情報の入手に当たり、次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 新たな機械設備等を外部から導入しようとする場合には、当該機械設備等のメーカーに対し、当該設備等の設計・製造段階において調査等を実施することを求め、その結果を入手すること。
イ 機械設備等の使用または改造等を行おうとする場合に、自らが当該機械設備等の管理権原を有しないときは、管理権原を有する者等が実施した当該機械設備等に対する調査等の結果を入手すること。
ウ 複数の事業者が同一の場所で作業する場合には、混在作業による労働災害を防止するために元方事業者が実施した調査等の結果を入手すること。
エ 機械設備等が転倒するおそれがある場所等、危険な場所において、複数の事業者が作業を行う場合には、元方事業者が実施した当該危険な場所に関する調査等の結果を入手すること。


◇(1)の「非定常作業」には、機械設備等の保守点検作業や補修作業に加え、予見される緊急事態への対応も含まれます。工程の切替に関する情報についても入手すべきです。
◇(1)アの「作業手順書等」の「等」には、例えば、操作説明書、マニュアルがあります。
◇(1)イの「危険性又は有害性に関する情報」には、例えば、使用する設備等の仕様書、取扱説明書、「機械等の包括的な安全基準に関する指針」に基づき提供される「使用上の情報」、使用する化学物質の化学物質等安全データシート
(MSDS)があります。
◇(1)ウの「作業の周辺の環境に関する情報」には、例えば、周辺の機械設備等の状況や、地山の掘削面の土質や勾配等があります。また、発注者において行われたこれらに係る調査等の結果も含まれます。
◇(1)エの「作業環境測定結果等」の「等」には、 例えば、特殊健康診断結果、生物学的モニタリング結果があります。
◇(1)オの「複数の事業者が同一の場所で作業を実施する状況に関する情報」には、例えば、上下同時作業の実施予定や、車両の乗り入れ予定の情報があります。
◇(1)カの「災害事例、災害統計等」には、例えば、 事業場内の災害事例、災害の統計・発生傾向分析、ヒヤリハット、トラブルの記録、労働者が日常不安を感じている作業等の情報があります。また、同業他社、関連業界の災害事例等を収集することが望ましい。
◇(1)キの「その他、調査等の実施に当たり参考となる資料等」の「等」には、例えば、作業を行うために必要な資格・教育の要件、セーフティ・アセスメント指針に基づく調査等の結果、危険予知活動(KYT)の実施結果、職場巡視の実施結果があります。
◇(2)アは、「機械等の包括的な安全基準に関する指針」、ISO、JISの「機械類の安全性」の考え方に基づき、機械設備等の設計・製造段階における安全対策を行うことが重要であることから、機械設備等を使用する事業者は導入前に製造者に調査等の実施を求め、使用上の情報等の結果を入手することを定めたものです。
◇(2)イは、使用する機械設備等に対する設備的改善は管理権原を有する者のみが行い得ることから、その機械設備等を使用させる前に、管理権原を有する者が調査等を実施し、その結果を機械設備等の使用者が入手することを定めたものです。また、爆発等の危険性のあるものを取り扱う機械設備等の改造等を請け負った事業者が、内容物等の危険性を把握することが困難であることから、管理権原を有する者が調査等を実施し、その結果を請負業者が入手することを定めたものです。
◇(2)ウは、同一場所で混在して実施する作業を請け負った事業者は、混在の有無やそれによる危険性を把握できないので、元方事業者が混在による危険性について事前に調査等を実施し、その結果を関係請負人が入手することを定めています。
◇(2)エは、建設現場においては、請負事業者が混在して作業を行っていることから、どの請負事業者が調査等を実施すべきか明確でない場合があるため、元方事業者が調査等を実施し、その結果を関係請負人が入手することを定めたものです。
◇調査等の対象となる機械設備等や周辺環境について、必要な情報の収集をそれぞれの事業者が実施することは、管理権原の問題等からできない場合があります。上記の各項はその場合の情報収集にあたっての留意事項を規定したものです。
(2)のアからエの中には、安衛法上、所有者等が使用者等に情報の提供等を行うことが義務づけられているものもありますが、本指針においては義務の有無にかかわらず、必要な情報を得るにあたっての入手先に関する留意事項として包括的に定めています。



 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。  (2013.9.4)

                                           

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