20)真空装置の漏れ検知と応用
真空装置には必ずある程度の漏れがあります。しかし、この漏れが目的とする操作に影響を及ぼさなければ問題はありません。
図1の排気系において真空容器を真空ポンプ(排気速度:S)で排気する場合について考察します。
導管を含む装置の到達圧力Pは、装置内部からの放出ガス量をQ(out)、装置外部から内部への流入ガス量をQ(in)とすると、次式で与えられます。
P=Q(in)/S + Q(out)/S −−−(1)
ここで、装置の要求圧力をP(req)とすると
P(req) > Q(in)/S + Q(out)/S −−−(2)
装置内部からの放出ガスQ(out)は時間をかければ減少(≒0)するので、(2)式は次のようになります。
P(req) > Q(in)/S −−−(3)
(3)式を変形すると次式が得られます。
Q(in) < P(req)・S −−−(4)
この場合、装置外部から内部への流入ガス量をQ(in)は当該排気系の目的とする操作には影響を及ぼさないため止める必要はありません。
真空技術活用マニュアルには真空装置における漏れの許容量が表1のようにまとめられています。
真空装置の漏れ検知の方法として加圧法、テスラーコイル法、ガイスラー管法、真空放置法などがあります。ヘリウムガスを利用した漏れ試験法は精度が高く、広く利用されています。ヘリウムリークディテクタは検出器にヘリウム専用の質量分析器を内蔵したもので質量数4のイオンのみを検出するように調整されています。筆者は1992年にヘリウムリークディテクターに出会い、検査装置への応用開発など、多くの経験を積み重ねることができました。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2013.6.12)
図1
真空容器の排気系
(出典:真空ハンドブック
改訂版V、ULVAC、
なお、当事務所で説明用文字、記号を追記しています)
許容リーク量
(出典:真空技術活用マニュアル)