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阿部技術士・労働安全コンサルタント事務所は、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。

TEL. 088-694-3482

〒771-1330 徳島県板野郡上板町西分字橋北16番地2

技術情報メモ26Technical information

26-2)設計の勘どころ(摩擦の種類/すべりと転がり)

 摩擦とは接する固体表面間に運動を妨げる力が生ずる現象のことです。このとき発生する摩擦力はボルトや釘などの緩み防止など様々な有用な働きをしています。この摩擦力は接触面積や運動速度によらず、接触面積に作用する荷重のみで決まるとされています(アーモントン・クーロンの法則)。
 摩擦は、
静止摩擦(静止している場合)と、動摩擦(運動している場合)に分けられ、動摩擦はすべり摩擦転がり摩擦に区別されます。また、摩擦面状態(流体の有無)により潤滑摩擦と乾燥摩擦にも分けられます。接触部における複雑な挙動はトライボロジーという科学分野の領域で研究されています。このように、17〜18世紀に発見された摩擦に関わる研究は現在も進歩を続けています。
 ここで、
すべり摩擦力転がり摩擦力の計算式を比較してみます。
 すべり摩擦力は F=μW ーーー@ で求められます。Wは物体の重量(N)、μ はすべり摩擦係数です。
 図1は円筒が平面に置かれた状態を示したものです。接触部分は変形して 「面」となり、その接触面積によって荷重を支えています。
 図1において変形によりfの2倍の長さが接触すると仮定すると
転がり摩擦力は 図1のA点回りのモーメントのつり合いにより 物体を転がすのに必要な力Fとして、
F=(f/r)WーーーAで求められます。
 @とAを比較すると、すべり摩擦係数μに(f/r)が対応していることが判ります。
 物体の材質や形状などが同じならば、転がり摩擦力(物体を転がすのに必要な力F)は物体の重量に比例します。このときの比例係数(f/r)を転がり抵抗係数とよびます。そして、半径rは物体固有の値(長さの単位:mm)なので、fを 転がり摩擦係数(mm)と考えることができます。転がり摩擦係数は長さの単位をもっており、無次元のすべり摩擦係数とは異質のものであることが分かります。
図1.転がり摩擦力


 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2019.5.27)

                                           

26-1)設計の勘どころ(摩耗の種類/波状摩耗)

 固体表面が互いに接しているとき、それらの間には相対運動を妨げる力がはたらきます。この現象を摩擦といい、「摩擦に伴って生じる固体表面から物質が徐々に失われる現象」を摩耗といいます。
 
摩耗は、主に機械的作用により摩擦面に発生する表面損傷の一つで、摩耗以外には塑性流動、転がり疲れ、焼付き、その他(熱割れなど)があります。このような表面現象に関連した諸問題を取り扱う学問分野をトライボロジーといいます。
 例えば、機械装置には多くの摩擦面があり、機械装置の性能や信頼性などはこれら摩擦面の摩擦や摩耗特性に影響されます。そして、相対運動しながら接触する部分には磨耗を生じ、表面が損傷して機械装置を破壊に至らしめる原因となります。破損による機械装置の寿命の三大原因は破壊、腐食、
磨耗と言われています。短寿命や性能低下を含めると摩耗の問題が破損原因の50%以上を超えているため、機械設備の維持管理にとって解決すべき重要な課題となっています。そこで、機械を設計する際にはトライボロジーを考慮しなければならないのですが、トライボロジーは物理学や化学など関連する分野が多いので、効率的に設計を進めるためには学際的な協力体制を整えておく必要があります。
 
摩耗は一般的に次のように分類されます。(山本,兼田,トライボロジー,理工学社(1998)p.188)
 @凝着摩耗、Aアブレシブ摩耗、切削摩耗、B腐食摩耗、C副次的摩耗(・エロージョン・キャビテーション・電食)
 これ以外にも、歯車や転がり軸受などの疲労摩耗、鉄道レールの波状摩耗などがあります。
 
 
図1は2018年8月25日の徳島新聞で報道された波状摩耗に関する記事です。
 保線ウィキには、
波状摩耗を次のように説明しています。
 
 「レールの波状摩耗の波長は、短いもので約30〜80mm、長いもので約200〜1,000mmとなっている。 波状摩耗
  が進行すると波高が2〜6mmとなる。よって、車両が通過するときに大きな衝撃が加わるため、軌道や車両に伝わ
  る振動が大きくなり、騒音も同様に大きくなり乗り心地が悪くなる。」

 
 JR北海道などは青函トンネル内のレールの場合も安全性に直結するとは考えていないようですが、今後トラブルが発生する可能性があると判断し、緊急工事に踏み切ったようです。
図1.青函トンネルレール波状摩耗
(出典:2018年8月25日付徳島新聞)      


<参考情報>
 機械には固体同士の相対運動しながら接触する部分が存在します。この部分には摩擦や摩耗が発生します。表面が損傷することにより、機械部品は機能が低下するので、場合によっては機械システムが破壊されます。このような相対運動部分に発生する損傷の機構解明などを対象とする科学・技術の分野がトライボロジー(tribology)です。
 このトライボロジーは軸受設計の基本となっています。接触する二面間の潤滑状態は境界潤滑と流体潤滑に大別されます。すべり軸受けは流体潤滑理論を用いて流体潤滑状態で運転されるようにするのが基本です。しかし、運転開始や終了時には境界潤滑状態になります。また、転がり軸受も潤滑状態が良好であれば流体潤滑状態になっていますが、転動体が自転及び公転を繰り返しているため材料の疲労も考慮する必要があります。 

 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2018.10.1)

                                           

26)設計の勘どころ(トライボロジー)

 微視的な研究が行われるようになって定着してきたトライボロジーについて紹介します。
 トライボロジー(tribology)とは二つの物体の面が接触して滑り合うときの、摩擦・摩耗・潤滑などの現象や過程などに関する科学・技術のことです。
 徳島県技術士会報(2000年)に寄稿した拙文「失敗に学ぶ」を以下の文章で締め括っています。
 (以下、引用) 
 FTAやパレート分析は単にプレゼンテーション用資料作成に用いるためだけの手法ではない。機械装置改善や品質管理
 するための手法であり、道具である。機械装置が大型になり、機構が複雑になると発生したトラブル事象のみでは何を
 為すべきか判断しきれないことがある。このような場合、FTAやパレート分析のような手法を用いると効果的である。
 信頼性を維持し、向上させるためには失敗情報を意味あるものにして伝達しなければならない。
 失敗した人の話(言い訳)を聞くと「いつのまにか失敗でなくなっている」ことがある。失敗を失敗として真摯に受け
 止め、再発防止するためには何を為すべきか考えなければだめである。その為には失敗を失敗として正直に報告できる
 組織でなければならない。
 その昔、1000の化合物を調べて二つ三つの新薬ができればよい(俗に言う、せんみつ)と言われていた。今はもっと
 低い確率である。所詮、成功より失敗が多い世の中であれば失敗とどのように向き合い、失敗をどのように活かしてい
 くかを考えた方が得である。
 「JCO、雪印乳業など多くの失敗が生じるためにその根本対策を模索していた文部科学省は畑村著「失敗学のすすめ」
 に書いた失敗に対する考え方に共鳴するところがあり、2001年4月から「失敗知識活用研究会」を発足させ失敗のデー
 タベースを構築することになった」とのことである。
 老朽化が進行する機械装置で構成される製造ラインを維持し、品質を確保するためのキーワードとして次の二つを挙げ
 た。今後、取組み、応用すべきテーマであると考える。
  @トライボロジー(摩擦、磨耗、潤滑)  
   相対運動しながら接触する部分は必然的に磨耗を生じ、表面が損傷して機械システムを破壊に至らしめる原因とな
   る。破損による機械装置の寿命の三大原因は破壊、腐食、磨耗と言われるが、磨耗による問題が短寿命や性能低下
   を含めると50%以上を超えているとして機械設備の維持管理にとって解決すべき重要な課題となっている。
  A品質工学(タグチメソッド)
   品質工学は評価(予測)技術である。良品の品質レベルから問題が起こることを予測する。品質工学は「統計的な分
   布手法を用いず、設計から製造の全般について少ない試料で短時間に品質を評価したり、改善する手法」である。
  参考文献: 岩井善郎,新・役に立つトライボロジ,日本機械学会講習会教材(2000),1-2.
        原和彦,タグチメソッド概説と技術開発,日本機械学会講習会教材(2000),6.
        矢野宏,品質工学入門,日本規格協会(1995)

 機械には固体同士の相対運動しながら接触する部分が存在します。この部分には摩擦や摩耗が発生します。表面が損傷することにより、機械部品は機能が低下するので、場合によっては機械システムが破壊されます。このような相対運動部分に発生する損傷の機構解明などを対象とする科学・技術の分野がトライボロジー(tribology)です。
 このトライボロジーは軸受設計の基本となっています。接触する二面間の潤滑状態は境界潤滑と流体潤滑に大別されます。すべり軸受けは流体潤滑理論を用いて流体潤滑状態で運転されるようにするのが基本です。しかし、運転開始や終了時には境界潤滑状態になります。また、転がり軸受も潤滑状態が良好であれば流体潤滑状態になっていますが、転動体が自転及び公転を繰り返しているため材料の疲労も考慮する必要があります。 

 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2013.7.29)

                                           

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