5-1)東レ・炭素繊維1兆円受注(航空機部材・米ボーイング社と共同開発)
「東レは17日、米ボーイング社から航空機向けの炭素繊維部材を1兆円分受注することに基本合意したと発表した。次期大型旅客機「777X」と、現行の中型機「787」用に今後10年以上にわたり炭素繊維部材を供給する。部材の共同開発も開始する。」と、2014年11月18日、マスメディア各社は報じています。
東レは炭素繊維の製造で世界首位です。炭素繊維は多くの分野に用途が広がっており、東レは米ボーイング社との取引拡大を機に競合他社との差を広げそうです。素材メーカー(東レ)と航空機メーカー(ボーイング)の垣根を越えた広範な共同開発により、高性能で保守管理が容易な航空機の出現が期待できそうです。 (2014.11.27)
5)複合材料
複合材料とは「性質の異なる2種類以上の材料を組み合せて作られた単一の材料にはない性質を有する材料」のことである。複合材料は界面を有しており、金属材料の合金とは異なる。合金の場合、原子レベルまでミクロに観察すると各材料は固溶しており、界面が存在しない。
複合材料は強化形態による分類と母材による分類が一般的である。
1)強化形態による分類
@粒子分散複合材料、A繊維強化複合材料、B積層複合材料
2)母材による分類
@高分子基複合材料、A金属基複合材料、Bセラミック基複合材料
複合材料の歴史は比較的新しい。
1917年、ドイツ、ガラス繊維の工業化に成功。
1931年、アメリカ、ガラス繊維の大量生産プロセス完成。
1950年代、グラスウールやFRPなどの製品が出現。
1959年、アメリカ、世界初のレーヨン系炭素繊維発明。
1960年頃、住宅の断熱材としてグラスウールが日本で使用され始めた。
1961年、日本、PAN系炭素繊維発明。
1963年、日本、ピッチ系炭素繊維発明。
1970年以降、炭素繊維は複合材料の素材として使用、改良が進んだ。
1980年以降、大型輸送機器から身近な製品まで広く普及した。
ボーイング社が開発した中型ジェット旅客機ボーイング787には炭素繊維強化複合材料が機体重量の
約50%使用されている。
ANA向けのボーイング787の1号機は2011年9月28日に羽田空港に到着した。そして、2012年1月14日,
羽田−北京線で世界初の国際線定期便の運航を開始した。
このように材料開発は日進月歩であり、今後も新しい複合材料の出現が期待される。
現在、炭素繊維強化複合材料はPAN系、ピッチ系、レーヨン系の3種類である。レーヨン系の製造はほとんどなく、PAN系が約90%を占めている。PAN系の需要規模は2011年には37,000t/年に拡大した模様で、日本の東レ(約35%)、
帝人(約20%)、三菱レイヨン(約15%)が上位3位までを占めている。 (2012.11.28)