52-2)ICT成長戦略
総務省は、1973年からIT産業の現況や政策の動向などを取りまとめた「情報通信白書」を公表しています。
2013年6月、ICT成長戦略会議により「ICT成長戦略~ICTによる経済成長と国際社会への貢献~」が発表され、
2020年までのロードマップが示されました。
総務省のホームページを閲覧しながら少し整理してみました。
1)2000年9月e-Japan構想発表:「5年以内に世界最先端のIT社会を目指すこと」(大目標)
四つの重点政策 ①超高速ネットワークインフラの整備
②電子商取引の制度基盤や市場ルールの整備
③電子政府の実現
④人材育成
2)2000年高度情報通信ネットワーク社会形成基本法成立
3)2001年情報通信技術戦略本部(IT戦略本部)設置
4)2004年総務省が「e-Japan」を「u-Japan」と改称し、IT(情報技術)からCommunication(通信)を加えた
ICT(情報通信技術)への全面的な移行の打ち出した。
u-Japanとは、ユビキタスネット社会実現に向けた政策のことで、
「ユビキタスネットワーク整備」、
「ICT 利活用の高度化」、
「安心·安全な利用環境の整備」という方向性をもって
2009年10月まで議論および検討がなされていた。
図1は「ICT成長戦略~ICTによる経済成長と国際社会への貢献~」の1頁目に記載されているICT成長戦略-基本的視点-」を引用したものです。
図1.ICT成長戦略におけるミッション&ビジョン
(出典:総務省ICT成長戦略会議「ICT成長戦略~ICTによる経済成長と国際社会への貢献~」2013年6月)
当事務所ではものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2018.7.1)
52-1)第4次産業革命
2017年4月発行の日本機械学会誌は、「つながる工場」のインパクトについて、特集しています。「つながる工場」と呼んでいるのは製造業のIoT化のことです。
製造業のIoT化については、製造業の新たな展開と将来像として2016年5月20日に公表された「2016年版ものづくり白書」の第1部に、次のように紹介されています。
2015 年版ものづくり白書「第1部第1章、第3節 製造業の新たな展開と将来像」では、IoTやビッグデータ、
AIを始め、第4次産業革命とも称されるデジタル化の進展によって変わりつつある製造業について、またドイツ
のインダストリー4.0や米国のインダストリアルインターネットといった海外の動向について紹介した。2014 年
以降、IoTに関する記事を目にする機会や、IoTをテーマとするセミナーの開催が増えている。また、我が国で
も製造業において、若しくは産業界全体で、IoTをどのように推進していくのか、企業を超えて検討をしていく団
体が複数立ち上がり、様々な側面から議論を進めている。そうした中では「現在IoTといってもてはやされている
話は以前から日本の製造現場で行われている」といった意見がある一方、「日本の製造現場は海外に比べて大きく遅
れをとっている」といった意見もあるが、我が国のものづくりの優位性を活かした、IoT社会における製造業の絵
姿を描く上で、何ができていて何が不足しているのか、我が国の現状を知ることが重要である。
以下では経済産業省が実施したアンケート調査に基づき、IoT等の技術の活用に関する我が国企業の対応状況に
ついて分析を行う。
なお、アンケートでの質問項目の構成は、設計・開発から生産、販売、運用・保守までのエンジニアリングチェー
ン全般に関して、各工程の分野ごとに複数の問いを設定し、データの収集、活用状況について、「実施している」
「実施する計画がある」「可能であれば実施したい」「実施予定なし」の選択肢を設けた(図113-1)。
-以下、略-
産業革命とは産業界における多くの変革やそれに伴う社会構造の変革のことです。後世の歴史家は、これまでに生起した重要な変革として次の三つを掲げています。
産業革命
18世紀半ばから19世紀にかけて起こった一連の産業の変革と、それに伴う社会構造の変革
・ジェニー紡績機発明(イギリス、1764年)⇒綿織物の生産過程における様々な技術革新
・ジェームズワット蒸気機関の改良(イギリス)⇒高効率な動力源としての普及、蒸気船や鉄道の発明
・手作業から工場制機械工業による大量生産(その効率を追求する過程で標準化や規格化を推進)
・農業中心から工業中心の社会へ変貌。
第2次産業革命
産業革命の第二段階として、通常、1865年から1900年までと定義される。
イギリス中心からドイツやフランス、アメリカ合衆国の技術革新が顕著となり工業力が向上。
・石油の普及により内燃機関も動力源として採用。
・電力の普及により工場の大量生産を支える動力源として広く採用。
・化学、電気、石油および鉄鋼の分野における技術革新。
・標準化や規格化と共に、統計的手法を用いた科学的な管理手法も定着。⇒生産性や品質の向上に貢献。
・効率化を追求した量産システムの登場、化学産業の台頭など。
第3次産業革命
・1950年代から1960年代にかけて、事務作業を機械化する目的で開発されたコンピューターが、1970年代に入ると
もの作りの現場で使われるようになった。
・コンピューターや産業用ロボットの普及は生産の自動化に大きく貢献した。
・コンピューターの利用技術の発展⇒多品種少量生産に対応したFMS(フレキシブル・マニファクチャリング・システ
ム)など。
図113-1.IOT等の技術の活用に関する質問項目(出典:経済産業省2016年版ものづくり白書)
当事務所ではものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2017.5.7)
52)3Dプリンタと魔鏡
2014年1月30日、「卑弥呼の鏡」と呼ばれる三角縁神獣鏡が、図1に示すように、鏡面に太陽光を当て壁に反射させると、裏面の文様を映し出す「魔鏡」だったことが分かり、京都国立博物館が29日、発表したと、各メディアが報じています。「STAP細胞」の報道に隠れてしまった感がありますが、この発見は3Dプリンタを用いて精巧なレプリカを作製し、実験したことによって可能となったものです。今後、「古代の銅鏡」の使用目的などの研究に役立つ発見と期待されています。
ところで、今回用いた3Dプリンタとはどのようなものでしょうか。3Dプリンタは1970年代に日本や米国などの先進国で研究が始まりました。
日本では1980年4月に名古屋市工業研究所の技術者だった小玉秀男が光硬化性樹脂を用いた光造形法で特許出願しまし
たが、審査請求はしなかったようです。従って、特許は取得していません。
米国では1982年にChuck Hull(チャック・ハル)が光造形システムの概念を形成し、特許を申請し、1986年に基本特許を取得しました。その後、米国3D
Systems社を設立しています。そして、1987年に世界初の市販用光造形マシンSLA-1システムを発表しました。詳細は(http://www.3dsystems.co.jp/company/)に記載されています。
筆者は、30歳代の頃、木型製作に代わるものを探したことがあります。その際、光硬化樹脂で造形できるとの情報を得ました。これが3Dプリンタだったのかも知れません。当時は別の名称だったように思います。このように記憶は曖昧なのですが、「高価だけど、いろんな可能性を秘めた将来性のある技術」との印象は残っています。
今や、3D Systems社の合計世界シェアは約70%に達するといわれています。日本発のこの発明が何故、日本で成長、発展しなかったのか、不思議でなりません。
図1.魔鏡の仕組み(出所:2014年1月30日付、徳島新聞(3)総合)
次に、2013年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)に記載されている「3Dプリンタ」に関するコラムを紹介します。
第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題
第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望の、第3節 世界の“ものづくり”の潮流の変化 の、2.には
サプライサイドの変化(p.99~102)について、次のように記載されています。
(詳細は(http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2013/index.html)をご覧ください)
生産設備などの「製造プロセス」のデジタル化により、熟練技術者がいなくても一定水準のものづくりが可能に
なり、製造技術の蓄積のない新興国企業でも製造業への入や技術のキャッチアップが容易になった。さらには、
「製造プロセス」だけでなく、一部の「製品」そのものにおいてもデジタル化が進行しており、そのような製品
は部品同士のインターフェイスを標準化することにより、各パーツを組み合わせれば製品を完成・機能させるこ
とができるモジュール化が起こっている。このような“ものづくり”におけるデジタル化は、製品の「コモディテ
ィ化」をもたらし、激しい価格競争に陥るため、自らに有利な事業領域の選択が必要となる。新興国企業が大規
模投資と大量生産により市場シェアを拡大する中で、欧米企業は事業領域の選別と国際標準・知財戦略の活用を
戦略的に行っている。ー以下、省略ー
この節に「3D(次元)プリンタ」に関するコラムが掲載されているので、抜粋して紹介します。
世界のものづくり産業が注目する「3次元プリンタ」
我が国では、俗に「3次元プリンタ」と呼ばれることが多いが、正式にはアディティブ・マニュファク チャリ
ング(Additive Manufacturing:AM)技術といい、プラスチック、樹脂、金属粉などの材料を 一層ごとに連続
的に積層して立体物を造形する技術のことを指す。3次元積層造形技術ともいわれる。例えば、ABS 樹脂をノズ
ルから射出して積層するもの、紫外線を使って槽の中にある液体樹脂を固めていくもの、金属粉に電子ビームを
照射して造形するものなどがある。鋳造の砂型をレーザーなどを使って積層造形する「ラピッド・プロトタイピ
ング工法」もAM 技術である。3次元積層造形装置は、3次元データを入力すると、精度の高い立体的な製品がで
き上がる(“3次元プ リンタ”と呼ばれるのはこのためである)ため、これまでのものづくりに革命をもたらすも
のとして最近、 世界で注目されている。また、3次元積層造形装置の価格も低価格化が進み、造形用材料の種類
も増加し つつあり、AM 技術が広く普及する大きな理由となっている。 現在、AM 技術は、試作品やオーダー
メイド品などの少量 生産に限られ、大量生産には向かない。しかし、安価な3次 元積層造形装置を大量に導入
し、AM 技術が本格的に普及す ると、従来のものづくり技術が不要となるおそれもあり、我が国のものづくり
の方法が大きく変わる可能性を秘めてい る。果たして、AM 技術は、我が国のものづくり産業にとっての脅威
なのか、それとも、競争力を向上させるためのチャ ンスとなるのか、引き続き注目する必要があろう。
先進技術に対する我が国ものづくり企業の関心
科学技術や製造技術の進化・発展は、ものづくりのあり方を変化させてきた。最近では、3次元プリン タの登場
がものづくりに新たな変革をもたらそうとしている。進化する技術を絶えず取り込むことはもの づくり企業の
成長にとって不可欠であるが、我が国ものづくり企業がどの程度、3次元プリンタなどの先進技術に関心を持っ
ているかアンケートで尋ねた。 その結果、「3次元プリンタ」に対する関心は回答企業数の40.8%であり、
「先端複合技術」(58.5%)、「3 次元スキャン」(43.2%)に次ぐ比率であった。「3次元プリンタ」に対す
る関心度合いを業種別で 見ると、「一般機械」が51.7%と最も高く、以下「輸送用機械」「電気機械」が続い
ている。3次元プリン タは従来の金型に替わり得る技術であり、機械系業種における関心の高さがわかる。
-以下、省略ー
当事務所ではものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2014.2.7)