56)計量(第3回 長さを測る)
長短さまざまな物の長さを測るために様々な道具を生み出し、改良を重ねて今日に至っています。地球から約20億km離れた小惑星イトカワ(540m×270m×210m)に探査機(はやぶさ)が着陸できたのにも「測る」技術の進歩が大きく貢献しています。
「長さをはかるものさし」の基準となる単位「m(メートル)」は1789年にフランスで生まれています。その背景には、いわゆる「産業革命」による産業の飛躍的な発展がありました。その後、以下のとおり、メートルの定義は変遷しています。
1789年 メートル単位誕生(フランス)
1875年 メートル条約制定(最初の署名国17、日本は1885年加盟、1891年度量衡法制定)
1879年 メートル原器作製(地球の子午線の赤道から北極までの長さの1000万分の1と定められ、実際の測量に基
づいてその長さを表すメートル原器が作られた。)
1889年 第1回国際度量衡総会において、メートル原器が長さの標準として国際的に採用された。
1960年 第11回国際度量衡総会において、メートル原器を長さの基準とすることをやめ、物理現象による長さの定
義に改められた(経時変化を避けるため、クリプトン86原子のスペクトル線の波長を用いて定義)。国際
単位系が採択された。
1983年 第17回国際度量衡総会において、レーザー技術の発展により「1秒の 299 792 458分の1の時間に光が真
空中を伝わる行程の長さ」がメートルの定義として採用された。
ここでは、産業機械の制御に使用されている測長方式について紹介します。
表1は、市販されている測長器の方式と特徴をまとめたものです。この表は日本機械学会誌からの引用ですが、説明を少し補足しています。
光は〈粒子性〉と〈波動性〉を有しています。複数の波の重ね合わせによって新しい波形ができる干渉を利用したのが光波干渉方式です。光学格子干渉方式とは、対向するレーザー光によって定常波を作りだし、これを格子状に配列させた光学格子を用いた方式です。グレーティングとは、格子状のパターンによる回折を利用して干渉縞を作るために使用される光学素子の総称で、回折格子とも呼ばれます。モアレとは干渉縞ともいい、規則正しい繰り返し模様を複数重ね合わせたときに、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のことです。このモアレを利用したのが光学モアレ方式です。
表1.測長方式と特徴(市販測長器の代表値)
(出典:福薗誠一(2011) 「長さを測る」日本機械学会誌vol.114 1117,p.860)
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