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〒771-1330 徳島県板野郡上板町西分字橋北16番地2
自然災害が発生したとき人工物が自然のエネルギーに耐え切れず大きな災害となることがあります。2011年 3月11日に発生した東日本大震災による災害もそれです。英知を結集して設計製作していたはずの原子力発電所が一瞬にして破壊されてしまいました。想定外の規模であったということだけで片付けられるでしょうか。
第1回 設計の役割において源流管理の重要性を紹介しました。設計が広辞苑でいう「@ある目的を具体化する作業。製作・工事などに当たり、工費・敷地・材料及び構造上の諸点などの計画を立て、図面その他の方式で明示すること。A比喩的に、人生や生活において計画を立てること。」であるならば、可能な限り上流の計画段階で品質や安全を作り込まなければなりません。
そのための方法論が各分野の研究者たちによって展開されていますが、「もの」を具体化するための「考えるプロセスである設計」をおろそかにしてはならない点で一致しています。そして、設計者は自分が設計製作した「もの」が、社会に役立つ反面、人を傷つけることがあるということも認識しておかなければなりません。設計者は、自分が設計した「もの」を使う人の立場や状況にまで思いを馳せなければならないのです。
安全の分野では厚生労働省から「機械の包括的な安全基準に関する指針」が公表されています。その中で、機械の安全化のために機械のメーカー、ユーザーそれぞれが実施すべき事項が定められています。機械の安全化は事故や品質トラブルの未然防止に繋がる重要なポイントなのです。
この指針には機械の安全化の進め方として
1)機械の製造等を行う者(メーカー)の実施事項と
2)機械を労働者に使用させる事業者(ユーザー)の実施事項が 記載されています。
指針の概要を文末(青字)にまとめていますが、詳細については厚労省のホームページで確認しておくことをお勧めします。
何か重大な事故が発生した場合、そんな指針があるなんて知らなかったでは済まなくなります。ものづくりの現場では果たすべき義務があることを認識しておかなければなりません。
図1は指針に記載されているリスクアセスメントの手順と日本品質管理学会発行の「人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止のための方法論の体系化」に記載されている6ステップを比較したものです。何れの低減化手法も「危険源を抽出・特定し、リスクを評価した後、その評価結果に基づき、リスク低減措置を実施する手順」となっています。設計者はこの作業を可能な限り上流の計画や設計の段階で実施し、安全や品質の作り込みを行うことが最も効率的な対応であることを認識すべきと考えます。
(参考:指針の概要)
1)機械メーカーにおける安全化の進め方
@機械のリスクアセスメントを実施する。
・機械の設計段階において機械の制限(使用上、空間上及び時間上の限度・範囲)に関する仕様を指定する。
・機械に労働者が関わる作業等における危険性又は有害性の同定(機械による危険性又は有害性として 例示されて
いる事項の中から同じものを見い出して定めることをいう)を行う。
・同定された危険性又は有害性ごとのリスクの見積り及び適切なリスクの低減が達成されているかどうかの検討を
行う。
・保護方策の検討及び実施によるリスクの低減を図る。
リスクが適切に低減されていない場合は「本質的安全設計方策」、「安全防護」、付加保護方策」及び「使用上
の情報提供」の優先順位で保護方策の適用を検討・実施する。
Aリスクアセスメントの結果に基づき、保護方策を実施する。
・リスクアセスメントの結果に基づき、法令に定められた事項がある場合はそれを必ず実施するとともに、適切な
リスクの低減が達成されていないと判断した危険性又は有害性について、次に掲げる優先順位により、機械に係
る保護方策を検討し実施するものとする。
ア)本質的安全設計方策
イ)安全防護及び付加保護方策
ウ)使用上の情報提供
なお、「本質的安全設計方策、安全防護又は付加保護方策を適切に適用すべきところを使用上の情報で代替
してはならないものとする」と記載されているので注意が必要である。
2)機械ユーザーにおける安全化の進め方
@情報を入手し、リスクアセスメントを実施する。
・機械を労働者に使用させる事業者は、使用上の情報を確認し、次に掲げる機械に労働者が関わる作業等における
危険性又は有害性を、同定するものとする。
ア) 機械の意図する使用が行われる作業
イ) 運搬、設置、試運転等の機械の使用の開始に関する作業
ウ) 解体、廃棄等の機械の使用の停止に関する作業
エ) 機械に故障、異常等が発生している状況における作業
オ) 機械の合理的に予見可能な誤使用が行われる作業
カ) 機械を使用する労働者以外の者(合理的に予見可能な場合に限る)が機械の危険性又は有害性に接近する
こと
・同定されたそれぞれの危険性又は有害性ごとに、リスクを見積もり、適切なリスクの低減が達成されているかど
うか及びリスクの低減の優先度を検討するものとする。
・リスクの見積りに当たり、それぞれの危険性又は有害性により最も発生するおそれのある負傷又は疾病の重篤度
によってリスクを見積もるものとするが、発生の可能性が低くても、予見される最も重篤な負傷又は疾病も配慮
するよう留意するものとする。
・ メーカーから提供された「使用上の情報」とともに、作業手順書や機械設備のレイアウトなど関係する情報を入
手のうえ活用し、リスクアセスメントを実施する。
Aリスクアセスメントの結果に基づき、保護方策を実施する。
・リスクアセスメントの結果に基づき、「使用上の情報」に記載のあった事項も含め、必要な保護方策を実施し、
リスクが適切に低減されたことを確認する。
・ユーザーでの設備対策を講じた後に存在する「残留リスク」に対しては、作業手順の作成や教育訓練の実施など
の措置を行ったうえで機械を使用する。
・リスクアセスメントを実施する上で、必要な情報がメーカーから提供されていない場合には、メーカーに情報を
提供するように求める。また、発注の段階で安全に関する仕様をメーカーに提示するとともに、使用開始後に明
らかになった安全に関する情報をメーカーにフィードバックする。
・注文時にはメーカーにおいて、リスクアセスメントに基づく措置に配慮した機械を採用するようにし、必要に応
じ注文時の条件にこれを加える。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。(2014.7.28)
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