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阿部技術士・労働安全コンサルタント事務所は、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。

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技術情報メモ69Technical information

69)設計の勘どころ(品質保証/全数検査・抜取検査・間接検査)

 製造ラインにおいて品質を作り込み、品質レベルを高く設定し、検出精度の高い検査装置の導入により品質保証すること、これは極めて自然の成り行きです。
 医薬品製造ライン(技術情報メモ13)について考えてみます。
 製造ラインには薬剤が入った医薬品容器が流れています。製造ラインにおいて保証すべき品質は「薬剤」と「容器」に関わるものです。
 例えば、医薬品容器に密封性を損なうような欠陥が存在すると充填された薬剤は酸素あるいは水分などの影響を受け、多少にかかわらず品質の劣化を生じる可能性があります。中でもガスバリアフィルムによる包装は熱シール部を有するため、特に厳重な密封検査が必要になります。しかし、基本的には熱シールと冷却工程の組合せであり、厳重な品質管理の下で製造しても、欠陥の発生をゼロにすることは難しいかもしれません。それ故、密封性を保証するための検査装置の導入が不可欠となるのです。
 設計者は製造ラインを安定稼働させ不良を限りなくゼロに近づけるために何を為すべきかについて、企画から運用にいたる全ての段階で考え続けます。特に、不良の発生傾向が把握できていない新製品の場合は、対応に苦慮するのですが、新製品に限らず、不良傾向が把握できない場合はその品質の安定限界を超える不良をすべて検出し、排除できる検査装置を開発し、導入しなければなりません。この際、設計者が検査について漏れなく効率的に検討を加える上で、参考となる原則があります。それは「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」という記事を書く際の6つ原則です。これは情報伝達のポイントですが、製造ラインを見渡し、検査が必要な個所を5W1Hに沿って整理して、「いつ(どの段階)で、どこで(どの工程)で、だれが、なにを(どんな不良)を、なぜ(どんな理由)で、どのように」検査するかを考えると、ポイントを外すことなく検討することができます。
 このように、製造ラインでは製品の品質を保証するために目的に応じた検査を行っています。検査には、製品すべてを検査する
全数検査と製品すべてを検査するのではなく、抜き取った一部だけを検査し、全体(ロット)が適合か・不適合かを判定する抜取検査があります。これ以外には、例えば、事前の取り決めにより、仕入れ先の検査成績書等を確認することによって、自社での受入検査を省略する間接検査があります。
 なお、JIS規格では JIS Z8101-2: 1999 統計−用語と記号− の 第2 部において、統計的品質管理用語が次のように分類、規定されています。(出典:日本産業標準調査会ウェブサイト)
 − 統計的品質管理一般用語
 − 観測値・試験値に関する用語
 − サンプリング用語
 − 抜取検査用語
 − 統計的工程管理用語
1)
検査については、1.統計的品質管理一般用語の1.3検査において次のように規定されています。
 「品物またはサービスの一つ以上の特性値に対して,測定,試験,検定,ゲージ合わせなどを行って,規定要求事項と比較して,適合しているかどうかを判定する活動。」
 また、全数検査と間接検査についてはそれぞれ次のように規定されています。
 1.4
全数検査
 「製品またはサービスのすべてのアイテムに対して行う検査。」
 1.5
間接検査
 「購入検査で,供給者が行った検査結果を必要に応じて確認することによって,購入者の試験を省略する検査。」
2)抜取検査については、4.抜取検査用語の4.1抜取検査において次のように規定されています。
 「製品またはサービスのサンプルを用いる検査。全数検査と異なる。」
3)検査対象となるロットについては1.7
ロットにおいて次のように規定されています。
 「等しい条件下で生産され,又は生産されたと思われる品物の集まり。
  備考 サービスについても,等しい条件下のひとまとまりをロットとすることができる。」
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 設計者は製造ラインにおいてどのような検査を行うべきかを検討しなければなりません。実施可能であれば全数検査すべきなのは言うまでもありません。例えば、医薬品や食品などのように健康被害を及ぼす可能性がある場合や自動車のブレーキのように不具合が事故原因になるような場合には1個でも不適合品は見逃すことはできません。
 医薬品や食品製造では、異物混入検査を行います。異物が金属と分かっていれば、金属検出器を使用することにより容易に全数検査できますが、既存の技術で対応できない場合は目的に応じた検査装置の開発が必要になります。全数検査できないから全数検査しないのではなく全数検査できる装置を開発しなければならないのです。
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 一方、製品ロットの中に、不良品の混入を許容できる場合、
抜取検査を行います。許容できる品質を設定する考え方です。この考え方はAQLと呼ばれ、Acceptable Quality Limitの略であり、合格品質水準の意味です。アメリカ合衆国の国防総省が、故障が少なく、かつ安定した武器、装備などの製作にあたり、部品を調達する際の品質として不良率を抜取り検査から割り出し、受入れ可否の判定に採用したのが始まりとされています。
 日本工業規格ではJIS Z 9015 : 1999において規定されています。一部を以下に引用します。
(出典:日本産業標準調査会ウェブサイト)
 
(略)「一般名称を計数値検査に対する抜取検査手順」として,次の各部によって構成される。
−第 0 部:JIS Z 9015 抜取検査システム序論
−第 1 部:ロットごとの検査に対する AQL 指標型抜取検査方式
−第 2 部:孤立ロットの検査に対する LQ 指標型抜取検査方式
−第 3 部:スキップロット抜取検査手順
 全数検査が自動試験機で実施されるのでなければ,全数検査は膨大な仕事であり得る。さらに,特に多数のアイテムが寸法,外観,性能など限界近くの特性を一つ以上含んでいるとき(許容差及び外観,性能の許容限界の周辺又は直近にあるとき)には全数検査はうまくいくとは限らない。このような場合には,手動又は自動の選別は,適合品を不適合品に分類したり,また逆に不適合品を適合品に分類したりしがち である。さらにまた,手動,目視又は自動の全数試験は不満足な場合がある。実際に,検査のための費用,時間及び人員が不十分なときには,全数検査は見せかけだけになることさえある。もし検査法が破壊試験を必要とするときは,全数検査は実行不可能である。 しかしながら,生産者及び消費者の双方にとって全数検査は必要な検査工程の一部であり得ることは理解しなければならない。この規格をよく読めば明らかになることだが,例えば,致命的不適合の検査のときのように,全数検査が必要な場合がある。ある種の不適合が非常に重要ならば,破壊試験でない限り全アイテムを調べなければならない。破壊試験の場合には,ある程度の危険率は許容しなければならない。 (略)-

 
 当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2019.11.7)

                                           

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