安全情報メモ51Safety information
51)小型移動式クレーン(原動機・油圧・電気・力学)
小型移動式クレーンに関する基礎知識について主な項目を紹介します。ここでは項目のみの紹介としていますので、詳細については関連の書籍、ウェブ資料等でご確認ください。
1)原動機
原動機とは、自然界に存在するさまざまなエネルギーを力学的エネルギー(機械的な仕事)に変換する機械や装置を総称したものです。流体機械、熱機関および電動機に大別されています。移動式クレーンに用いられている原動機は殆どが熱機関に属する内燃機関によるものです。原動機の構造や取り扱い方法などは使用する移動式クレーンによって異なっているので確認が必要です。
2)油圧装置
油圧装置とは、油圧を用いて作動する装置全般のことです。例えば、原動機のような外部の駆動源により油圧ポンプを動かし、得られた作動油によって油圧モータや油圧シリンダのような油圧駆動装置(アクチュエータ)を動作させて所定の仕事をさせることができます。油圧の原理はパスカルの原理(密閉された容器の中の流体は、その容器の形状には関係なく、流体の一部が受けた圧力を、そのままの強さで、流体の他のすべての部分に伝える。)を応用したものです。油圧装置は油圧発生装置(油圧ポンプ)や油圧駆動装置、油圧制御弁(方向、流量、圧力)、付属機器(作動油タンク、配管類など)で構成されています。
3)電気
移動式クレーンに関する電気の知識で、まず第一に挙げられるのは感電に関する注意事項です。人体に電流が流れることを感電といいますが、状況によっては死に至る場合があるので注意が必要です。
電流は値によって次のように分類(参考:新しい時代の安全管理のすべて(大関親))されています。
@最小感知電流 人が電撃を感覚する最小電流(交流で0.5mA)のことです。
A苦痛電流 苦痛に耐えられる限界の電流(交流で7〜8mA)のことです。
B不随意電流又は離脱電流 運動の自由がきかなくなる限界の電流(交流で概ね10mA)、意識不明や死に至る場合
があります。
C心室細動電流 血液の循環に支障をきたし、死に至る電流(計測不能、50mAとする文献あり)のこと
です。
また、電撃時間と危険接触電圧の関係、電撃時間と危険電流の関係なども求められています。
このように小さな電流でも人体に流れると非常に危険です。そして、高電圧の送電線には、クレーンのジブなどが接近しただけでも放電によって電流が大地に流れることがあるので注意が必要です。特に、送配電線近接作業の場合には安全距離の確認などの留意点を事前に抽出し、それらを遵守しつつ、細心の注意を払い、適正な作業を行わなければなりません。
4)力学
移動式クレーンに必要な力学とは、荷の巻上げ、巻下げ、移動などを行う場合の荷の運動と力に関するものです。移動式クレーンの転倒防止に関する対応にも力学の知識が不可欠です。移動式クレーンに必要な力学の知識は玉掛け作業と共通しています。詳細については安全情報メモ39)玉掛け作業(力学の知識)をご覧ください。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2013.1.11)