安全情報メモ63Safety information
63)労働災害(振動障害)
削岩機やチェーンソーなどの振動工具の使用に伴って発生する振動が人体に伝播することにより、末梢循環障害や末梢神経障害などの健康障害が生じることがあります。手足の血管が収縮することで起こる白蝋病などが知られれています。 1971年6月、特定工場における公害防止組織の整備に関する法律が制定され、公害防止管理者資格が誕生しました。振動関係公害防止管理者は大気や水質など他の公害防止管理者と同様、1971年の第1回試験から設置されており、2006年からは騒音関係と統合されています。
次表は厚生労働省の業務上疾病発生状況等調査による直近5か年の振動障害の結果を抜粋したものです。
業務上疾病(負傷に起因する疾病を除く)(全産業)
年度 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
業務上疾病件数 2,249件 1,770件 2,292件 2,125件 2,055件
内、振動障害件数 3件 3件 5件 4件 9件
平成21年7月10日付け基発0710第9号「振動障害予防対策の推進について」により、第11次労 働災害防止計画の最終年度(平成24年度)までの取組により、振動障害予防対策に一定の進捗がみられたと厚生労働省は判断しています。
そして、厚生労働省は、平成25年9月19日、各都道府県労働基準部長あてに、「今後の振動障害予防対策の推進について」(基安労発0919第1号)を発出していますので、紹介します。
今後の振動障害予防対策の推進について
振動障害総合対策については、平成21年7月10日付け基発0710第5号「振動障害総合対策の推進について」の別紙
1「振動障害総合対策要綱(以下「要綱」という。)」により示し、要綱に基づく振動障害予防対策 については、平成
21年7月10日付け基発0710第9号「振動障害予防対策の推進について」により、第11次労 働災害防止計画の最終年度
(平成24年度)までを計画期間として推進してきたところである。
この間の取組により、振動障害予防対策に一定の進捗がみられたことから、今後の振動障害予防対策の推進につい
ては、引き続き要綱による対策を推進するとともに、下記によることとしたので、その効果的な推進に遺憾なきを期さ
れたい。
記
1 今後の振動障害予防推進計画の策定等について
要綱の第1の2の振動障害予防推進計画の策定については、平成25年2月13日付け基安発0213第1号「安全衛生業務
の推進について」の記の5(4)のとおり、各局の対策の実施・普及状況等により必要に応じて策定するものとして差し支
えないが、策定の有無にかかわらず、いわゆる後戻りがないよう取り組むこと。
なお、要綱で定める事項の更なる普及徹底が振動障害予防対策に資すると考えられるため、今後とも機会を捉えて周
知・指導を行うこと。
2 指導に当たっての留意事項について
(1) 振動障害予防対策に係る危険性又は有害性等の調査等の推進について
「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成18年3月10日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公
示第1号)の9(3)には「振動障害等の物理因子の有害性によるもの」が規定されていることから、使用事業者に対し、
人体に有害な作用を及ぼすおそれのある振動工具を取扱う作業については、労働安全衛生法第28条の2に基づき、危険
又は有害性等の調査及び必要な措置を講じるよう、周知・指導を行うこと。
(2) 振動工具に係る危険性情報等の通知の推進について
上記2(1)の対策を使用事業者に講じさせるためには、「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」を使用事業者に
通知することが重要であることから、振動工具の製造事業者及び輸入事業者等に対し、「機械譲渡者等が行う機械に関
する危険性等の通知の促進に関する指針」(平成24年厚生労働省告示第132号)に基づき、使用事業者に対し、その必要
な情報の通知を行うよう周知・指導を行うこと。
この場合、平成21年7月10日付け基発0710第3号『振動工具の「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」の測定
表示等について』の記の2及び3に留意すること。
(3) 振動工具の適切な点検・整備等について
平成22年度及び23年度に実施した厚生労働省委託調査研究の「適切な振動工具の点検・整備、測定に関する調査研
究報告書」によると、適切な振動工具の整備を怠ると「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」が増大したり、振
動ばく露時間が延びたりすることにより、日振動ばく露量A(8)の値が大きくなることが報告されている。
従って、使用事業者に、要綱の第1の3(2)で定める「振動工具管理責任者」の選任及び振動工具の点検・整備の実施
を徹底させるとともに、適切な作業手順の作成をはじめとした作業管理を実施させるよう、周知・指導を行うこと。
なお、振動ばく露時間の算出に関し、使用事業者において随時「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」が計測
でき、的確に日振動ばく露量A(8)が把握できる場合は、平成21年7月10日付け基発0710第1号「チェーンソー取扱い
作業指針について」の別紙「チェーンソー取扱い作業指針」の第1の3(2)ウのただし書き及び平成21年7月10日付け基
発0710第2号「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針について」の別紙「チェーンソ
ー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」第1の3(2)ウのただし書きの場合に該当し、当該計測値
を用いて1日の振動ばく露限界時間TLを算出できるものであること。ただし、この場合であっても1日のばく露時間を
4時間以下とすることが望ましいこと。
また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。
(2014.3.18)