技術情報メモ16Technical information
16)真空技術の活用
医薬品容器に密封性を損なうような欠陥が存在すると充填された薬剤は酸素あるいは水分などの影響を受け、多少にかかわらず品質の劣化を生じる可能性があります。中でもガスバリアフィルムによる包装は熱シール部を有するため、特に厳重な密封検査が必要になります。
そこで、技術情報メモ15では密封検査の方法としては差圧法、水没法、ガス検知法等が知られていることを紹介しました。それぞれの方式と検出リーク値は次のとおりです。
1)水没法⇒水中に製品を入れ、減圧し、発生する気泡の大きさからリーク量を判定する方式である。
製品が濡れ、かつ、検出精度が低いことが欠点である。
検出リーク値:10-3(atm・cc/sec)
2)差圧法⇒密閉室内で減圧し、良否の圧力差を検出する方式である。
検出リーク値:10-3(atm・cc/sec)
3)ガス検知方式⇒ヘリウムガス、炭酸ガス、フロンガスなどをトレーサガスとした真空室法、大気吸込み法などが
ある。
検出リーク値:10-5~10-9(atm・cc/sec)
何れの方式も真空技術(減圧)を活用している点で一致しています。ここでは、真空技術の活用事例などについて紹介します。
1)真空とは
JIS規格(JIS Z 8126-1:1999 真空技術-用語-第一部: 真空用語)では次のように定義されています。
真空 通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態。
備考1. 圧力そのものをいうのではない。
2.真空の領域は習慣的に 2.1.1.1∼2.1.1.4 に示す圧力間隔で区分する
2.1.1.1 低(粗い)真空 圧力 100kPa∼100Pa (105∼102Pa)の真空。
2.1.1.2 中真空圧力 100Pa∼0.1Pa (102∼10−1Pa)の真空。
2.1.1.3 高真空 (HV) 圧力 0.1Pa∼10µPa (10−1∼10−5Pa)の真空。
2.1.1.4 超高真空 (UHV)圧力 10µPa (10−5Pa)以下の真空。
参考 圧力 1nPa (10−9Pa)以下の真空を極高真空 (XHV) と呼ぶこと もある。
2)真空技術の活用
真空はトリチェリが1643年に発見しました。そして、1648年、パスカルにより大気圧が証明されました。その後、
人類は大気圧より低い真空を作り、利用してきました。現在、人工的に作り出せる真空状態は10-11 Pa程度と言われ
ていますが、真空技術は電子、機械、金属、原子力、化学、医薬品など広い分野で活用されています。
魔法瓶、真空掃除機、吸引や輸送などの身近なものから各種の真空装置(例えば、真空蒸着装置、スパッタリング
装置、ドライエッチング装置、プラズマCVD装置、液晶注入装置、真空排気装置、真空貼り合わせ装置、真空包装機
など)まで幅広く活用されています。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2013.6.7)