トピックス詳細2Topics detail
2-6)国産ジェット機(スペースジェット)撤退
三菱航空機が開発中の国産初のジェット機(スペースジェット(旧MRJ))は、2020年10月30日、親会社の三菱重工業が、事業の凍結を発表し、YS-11以来、約半世紀ぶりの国産機開発は一旦立ち止まっていましたが、2023年2月7日、マスコミ各社は、三菱重工業がスペースジェットの開発を完全に取止め、撤退する方針を固めたと報じました。
100万点に及ぶ部品からなる航空機は産業の裾野が広く、自動車に続く成長産業に発展するとの期待もありました。しかし、YS-11以来の開発で技術力や人材不足が露呈、これまでに約1兆円の開発費を投じたが、開発決定から15年近くたった今も商業運航に必要な「型式証明」を取得できていないようです。
スペースジェットは、 2008年、三菱航空機が、全日本空輸から受注し、開発を進めている小型のジェット旅客機で、2014年10月18日にロールアウト(新型飛行機の初公開)が行われました。
その後、スペースジェットは、主翼の強度不足などによる設計変更や部品の納入遅延などが原因でこれまでに納期を6度延期し、現在は2021年度以降の納入を目指していました。
以下は、2012年5月2日に放送されたNHKの時事公論「加速するか国産旅客機開発」http://www.nhk.or.jp/
kaisetsu-blog/100/119570.html)の中で、MRJに関連する項目を抜き出し、要約したものです。新型コロナウィルス流行で航空機需要が落ち込むという不測の事態も重なり、道半ばでの撤退となりましたが、これまでに得られた多くの知見は決して無駄にはなりません。臥薪嘗胆*1)し、捲土重来*2)を期して欲しいものです。
*1)広辞苑ほか:春秋時代、呉王夫差が越王勾践を討って父の仇を報じようと志し、常に薪の中に臥して身を苦しめ、また、勾践が呉を討って会稽の恥をすすごうと期し、苦い胆を時々なめて報復を忘れまいとした故事から仇をはらそうと長い間苦心・苦労を重ねること。転じて、将来の成功を期して長い間艱難辛苦すること。
*2)広辞苑ほか:[杜牧、題烏江亭詩「捲土重来未可知」](晩唐の詩人、杜牧の七言絶句、烏江亭に題すの一節、「烏江亭に題す」は、杜牧が劉邦と項羽の楚漢戦争で、烏江の戦いにおいて項羽が非業の最期を遂げたのを悼んで読んだ詩で、「捲土重来未可知」は一度敗れたものが再び勢いを盛り返してくることをたとえており、敗けても恥を忍んで再起をはかれば勝敗はどうなるのかわからないものです。
1)世界の旅客機の需要は今後20-30年にわたって、平均5%以上拡大し、2030年には2.7倍の大きさになるといわれている。
2)大きさ別には座席数100以上の中型機、250以上の大型機のシェアはボーイング社とエアバス社が独占、座席数100未満の小型機は今後20年間の需要予測は5000機以上とも言われているが、既存のカナダのボンバルディア社、ブラジルのエンブラエル社に続いて、ロシア、中国も参入を目指しており、日本を含めて5陣営が入り乱れる激戦区である。
3)日本の航空機産業は第二次世界大戦後、航空機の研究や製造が禁止されたため、大きく後退した。
4)その間、航空機の技術者たちは、自動車や家電産業の中でかろうじて技術をつなぎ、加工技術や材料技術を育て、それらを生かして、再び国産旅客機に挑戦しようとしている。
5)一般的な採算ラインは400−500機といわれている。日本は後発であるがゆえの優位性(最新技術を導入して、燃費効率がよく、CO2排出も少なく、静かな機体を作れる)を発揮して、小型機の国際市場が固まらないうちに、積極的に食い込む必要がある。
6)MRJの成功はそのまま日本の真の技術力の証明に繋がる意味を持っている。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今回のスペースジェット開発事業撤退発表に至る過程では、度重なる納期延期により、顧客の信頼低下懸念や開発費がかさむ等、部外者の想像を絶するような課題が数多くあったと思われますが、関係者の判断にその場の空気が影響しなかったことを祈るばかりです。
山本七平著「空気の研究」の中に、次のような件(くだり)があります。
「空気」とはまことに大きな絶対権を持った妖怪である。一種の「超能力」かも知れない。(中略)
この「空気」なるものの正体を把握しておかないと、将来なにが起こるやら、皆目見当がつかないこと
になる。
組織の中で、「---------と思うが、どうか?」と上が言えば、それを受け、下は動かざるを得なくなるのではないでし
ょうか。ここは、「どうか?」で止めてはいけないのです。その場の空気が関係者の判断に影響を及ぼすようではい
けないのです。時には、その場の空気に水を差すことができる組織風土(共有・伝承されている価値観・行動規範・信念
の集合)でなければならないのです。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2023.2.26)
2-5)国産初のジェット機(スペースジェット)・一旦立ち止まる
三菱航空機が開発中の国産初のジェット機(スペースジェット(旧MRJ))、「2020年10月30日、親会社の三菱重工業が、事業の凍結を発表した」と30日から31日にかけマスメディア各社は報じました。1兆円規模を投じたYS-11以来、約半世紀ぶりの国産機開発は頓挫の模様です。報道によりますと、新型コロナウィルス感染拡大が直撃し、納入先航空会社の需要が見込めないためとしていますが、三菱重工業社長は、開発が大幅に遅れたのはノウハウや経験が欠けていたと説明しています。そして、今後、運航に必要な国の安全認証である「型式証明」の取得作業は継続するが、飛行試験は当面行わず、開発費を大幅に圧縮する方針です。
スペースジェットは、 2008年、三菱航空機が、全日本空輸から受注し、開発を進めている小型のジェット旅客機で、2014年10月18日にロールアウト(新型飛行機の初公開)が行われました。
その後、スペースジェットは、主翼の強度不足などによる設計変更や部品の納入遅延などが原因でこれまでに納期を6度延期し、現在は2021年度以降の納入を目指していました。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今回のスペースジェット開発事業凍結発表に至る過程では、度重なる納期延期により、顧客の信頼低下懸念や開発費がかさむ等、部外者の想像を絶するような課題が数多くあったと思われますが、関係者の判断にその場の空気が影響しなかったことを祈るばかりです。
山本七平著「空気の研究」の中に、次のような件(くだり)があります。
「空気」とはまことに大きな絶対権を持った妖怪である。一種の「超能力」かも知れない。(中略)
この「空気」なるものの正体を把握しておかないと、将来なにが起こるやら、皆目見当がつかないこと
になる。
組織の中で、「---------と思うが、どうか?」と上が言えば、それを受け、下は動かざるを得なくなるのではないでし
ょうか。ここは、「どうか?」で止めてはいけないのです。その場の空気が関係者の判断に影響を及ぼすようではい
けないのです。時には、その場の空気に水を差すことができる組織風土(共有・伝承されている価値観・行動規範・信念
の集合)でなければならないのです。
以下は、少し古いのですが、
2012年5月2日のNHKの時事公論「加速するか国産旅客機開発」(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/
119570.html)の中からMRJに関連するいくつかの項目を抜き出し、要約したものです。
1)世界の旅客機の需要は今後20-30年にわたって、平均5%以上拡大し、2030年には2.7倍の大きさになると
いわれている。
2)大きさ別には座席数100以上の中型機、250以上の大型機のシェアはボーイング社とエアバス社が独占、座
席数100未満の小型機は今後20年間の需要予測は5000機以上とも言われているが、既存のカナダのボンバ
ルディア社、ブラジルのエンブラエル社に続いて、ロシア、中国も参入を目指しており、日本を含めて5陣
営が入り乱れる激戦区である。
3)日本の航空機産業は第二次世界大戦後、航空機の研究や製造が禁止されたため、大きく後退した。
4)その間、航空機の技術者たちは、自動車や家電産業の中でかろうじて技術をつなぎ、加工技術や材料技術を
育て、それらを生かして、再び国産旅客機に挑戦しようとしている。
5)一般的な採算ラインは400−500機といわれている。日本は後発であるがゆえの優位性(最新技術を導入し
て、燃費効率がよく、CO2排出も少なく、静かな機体を作れる)を発揮して、小型機の国際市場が固まら
ないうちに、積極的に食い込む必要がある。
6)MRJの成功はそのまま日本の真の技術力の証明に繋がる意味を持っている。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2020.11.13)
2-4)国産初のジェット機(スペースジェット)・最新試験機、国内初飛行
2020年3月18日、三菱航空機が開発中の国産初のジェット機(スペースジェット(旧MRJ))の最新試験機が、愛知県営名古屋空港で初飛行しました。スペースジェットは、
YS-11以来半世紀ぶりの国産旅客機で、2008年、三菱航空機が、全日本空輸から受注し、独自に進めている小型のジェット旅客機で、2014年10月18日にロールアウト(新型飛行機の初公開)が行われました。
その後、スペースジェットは、主翼の強度不足などによる設計変更や部品の納入遅延などが原因でこれまでに納期を5度延期し、最新試験機の完成を2019年6月に予定していました。しかし、機体の安全確保のために設計変更した電気配線の組み付け等に関わる対応などに手間取り、機体の完成は2020年1月にずれ込んでいました。1月の試験機完成以来、地上でエンジンの動作確認などを行ってきました。
今後は、運航に必要な「型式証明」と呼ばれる国の認証取得に向け、機体を米国に移し、国土交通省のパイロットによる飛行試験が行われる予定です。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
度重なる納期延期により、顧客の信頼低下懸念や開発費がかさむ等、部外者の想像を絶するような課題が数多くあると思われますが、関係者の判断にその場の空気が影響しないことを祈るばかりです。
山本七平著「空気の研究」の中に、次のような件(くだり)があります。
「空気」とはまことに大きな絶対権を持った妖怪である。一種の「超能力」かも知れない。(中略)
この「空気」なるものの正体を把握しておかないと、将来なにが起こるやら、皆目見当がつかないこと
になる。
組織の中で、「---------と思うが、どうか?」と上が言えば、それを受け、下は動かざるを得なくなるのではないでし
ょうか。ここは、「どうか?」で止めてはいけないのです。その場の空気が関係者の判断に影響を及ぼすようではい
けないのです。時には、その場の空気に水を差すことができる組織風土(共有・伝承されている価値観・行動規範・信念
の集合)でなければならないのです。
以下は、少し古いのですが、
2012年5月2日のNHKの時事公論「加速するか国産旅客機開発」(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/
119570.html)の中からMRJに関連するいくつかの項目を抜き出し、要約したものです。
1)世界の旅客機の需要は今後20-30年にわたって、平均5%以上拡大し、2030年には2.7倍の大きさになると
いわれている。
2)大きさ別には座席数100以上の中型機、250以上の大型機のシェアはボーイング社とエアバス社が独占、座
席数100未満の小型機は今後20年間の需要予測は5000機以上とも言われているが、既存のカナダのボンバ
ルディア社、ブラジルのエンブラエル社に続いて、ロシア、中国も参入を目指しており、日本を含めて5陣
営が入り乱れる激戦区である。
3)日本の航空機産業は第二次世界大戦後、航空機の研究や製造が禁止されたため、大きく後退した。
4)その間、航空機の技術者たちは、自動車や家電産業の中でかろうじて技術をつなぎ、加工技術や材料技術を
育て、それらを生かして、再び国産旅客機に挑戦しようとしている。
5)一般的な採算ラインは400−500機といわれている。日本は後発であるがゆえの優位性(最新技術を導入し
て、燃費効率がよく、CO2排出も少なく、静かな機体を作れる)を発揮して、小型機の国際市場が固まら
ないうちに、積極的に食い込む必要がある。
6)MRJの成功はそのまま日本の真の技術力の証明に繋がる意味を持っている。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2020.5.16)
2-3)国産初のジェット機「MRJ⇒スペースジェット」・納期6度目延期
国産初のジェット機「MRJ」は、 YS-11以来半世紀ぶりの国産旅客機です。2008年、三菱航空機が、全日本空輸から受注し、独自に進める小型のジェット旅客機で、2014年10月18日にロールアウト(新型飛行機の初公開)が行われました。その後、「MRJ」は2019年6月13日に「スペースジェット」に改名されました。安全性向上のための設計変更などで、当初計画よりかなりの遅れとなっていますが、現在、運航に必要な「型式証明」と呼ばれる国の認証取得を目指し、米国で飛行試験をしています。
しかし、2019年6月に予定していた最新試験機の完成が2020年にずれ込んだことなどから、2020年半ばを目指していた初号機の納期を2021年以降に再延期する方針を固めたと2020年1月25日の徳島新聞は報じています。
スペースジェットは、主翼の強度不足などによる設計変更や部品の納入遅延などが原因でこれまでに納期を5度延期しています。今回は安全確保のために設計変更した電気配線の組み付け等に関わる対応などに手間取った模様です。
度重なる納期延期により、顧客の信頼低下懸念や開発費がかさむ等、部外者の想像を絶するような課題が数多くあると思われますが、関係者の判断にその場の空気が影響しないことを祈るばかりです。
山本七平著「空気の研究」の中に、次のような件(くだり)があります。
「空気」とはまことに大きな絶対権を持った妖怪である。一種の「超能力」かも知れない。(中略)
この「空気」なるものの正体を把握しておかないと、将来なにが起こるやら、皆目見当がつかないこと
になる。
組織の中で、「---------と思うが、どうか?」と上が言えば、それを受け、下は動かざるを得なくなるのではないでし
ょうか。ここは、「どうか?」で止めてはいけないのです。その場の空気が関係者の判断に影響を及ぼすようではい
けないのです。時には、その場の空気に水を差すことができる組織風土(共有・伝承されている価値観・行動規範・信念
の集合)でなければならないのです。
以下は、少し古いのですが、
2012年5月2日のNHKの時事公論「加速するか国産旅客機開発」(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/
119570.html)の中からMRJに関連するいくつかの項目を抜き出し、要約したものです。
1)世界の旅客機の需要は今後20-30年にわたって、平均5%以上拡大し、2030年には2.7倍の大きさになると
いわれている。
2)大きさ別には座席数100以上の中型機、250以上の大型機のシェアはボーイング社とエアバス社が独占、座
席数100未満の小型機は今後20年間の需要予測は5000機以上とも言われているが、既存のカナダのボンバ
ルディア社、ブラジルのエンブラエル社に続いて、ロシア、中国も参入を目指しており、日本を含めて5陣
営が入り乱れる激戦区である。
3)日本の航空機産業は第二次世界大戦後、航空機の研究や製造が禁止されたため、大きく後退した。
4)その間、航空機の技術者たちは、自動車や家電産業の中でかろうじて技術をつなぎ、加工技術や材料技術を
育て、それらを生かして、再び国産旅客機に挑戦しようとしている。
5)一般的な採算ラインは400−500機といわれている。日本は後発であるがゆえの優位性(最新技術を導入し
て、燃費効率がよく、CO2排出も少なく、静かな機体を作れる)を発揮して、小型機の国際市場が固まら
ないうちに、積極的に食い込む必要がある。
6)MRJの成功はそのまま日本の真の技術力の証明に繋がる意味を持っている。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2020.1.30)
2-2)国産初のジェット機「MRJ」飛行試験
国産初のジェット機「MRJ」は、 YS-11以来半世紀ぶりの旅客機です。2008年、三菱航空機が、全日本空輸からの受注し、独自に進める小型のジェット旅客機で、2014年10月18日にロールアウト(新型飛行機の初公開)が行われました。
安全性向上のための設計変更などで、当初計画よりかなりの遅れとなっていますが、国産初のジェット旅客機「MRJ」は2019年1月下旬ころから国土交通省のパイロットが搭乗する飛行試験を米国で実施すると2018年12月22日の徳島新聞は報じています。
この飛行試験は1年ほどかかる見通しで、「MRJ」の運航に必要な安全性を確認、認証するための「型式証明」の取得を目指しています。順調に進みますと、2020年半ばには、1号機納入となります。
以下は、少し古いのですが、
2012年5月2日のNHKの時事公論「加速するか国産旅客機開発」(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/
119570.html)の中からMRJに関連するいくつかの項目を抜き出し、要約したものです。
1)世界の旅客機の需要は今後20-30年にわたって、平均5%以上拡大し、2030年には2.7倍の大きさになると
いわれている。
2)大きさ別には座席数100以上の中型機、250以上の大型機のシェアはボーイング社とエアバス社が独占、座
席数100未満の小型機は今後20年間の需要予測は5000機以上とも言われているが、既存のカナダのボンバ
ルディア社、ブラジルのエンブラエル社に続いて、ロシア、中国も参入を目指しており、日本を含めて5陣
営が入り乱れる激戦区である。
3)日本の航空機産業は第二次世界大戦後、航空機の研究や製造が禁止されたため、大きく後退した。
4)その間、航空機の技術者たちは、自動車や家電産業の中でかろうじて技術をつなぎ、加工技術や材料技術を
育て、それらを生かして、再び国産旅客機に挑戦しようとしている。
5)一般的な採算ラインは400−500機といわれている。日本は後発であるがゆえの優位性(最新技術を導入し
て、燃費効率がよく、CO2排出も少なく、静かな機体を作れる)を発揮して、小型機の国際市場が固まら
ないうちに、積極的に食い込む必要がある。
6)MRJの成功はそのまま日本の真の技術力の証明に繋がる意味を持っている。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2018.12.23)
2-1)国産初のジェット機「MRJ」
プロペラ機の2倍近い速度が出せるジェット旅客機は、1952年、イギリスで就航したデハビランド・コメット機が初めてでした。快適さと高速で画期的な飛行機とされましたが、前項2)で述べたとおり、わずか2年後にフライト途中で二機の飛行機が相次いで空中爆発を起こしました。原因は金属疲労によるものでしたが、当時、相次いで起きた空中爆発は未知の領域に潜んでいた重大な欠陥によるものでした。事故原因の詳細な調査により、内在していた重大な欠陥が解明され、金属疲労にたどりついたのです。そして、これらの調査結果はその後の研究・改良や安全性の向上に貢献しました。そういった意味で、歴史に残る大きな事故でありましたが、社会を発展させた事故として語り継がれています。
本格的な旅客機のジェット時代の幕開けはアメリカのボーイング707の誕生によるとされています。ジェットエンジンは燃費の悪いターボジェットから燃費の良いターボファンに進歩し、航続性能も大幅に改善されています。
日本が戦後独力で開発した唯一の旅客機はYS-11です。YS-11は、双発ターボプロップ機で、昭和40年代以降、長く日本の地方を結ぶ航空路線で活躍しましたが、2006年、日本の商業路線から引退しました。
国産初のジェット機「MRJ」は、 YS-11以来半世紀ぶりの旅客機です。2008年、全日本空輸からの受注を受け、三菱航空機が独自に進める小型のジェット旅客機で、2014年10月18日にロールアウト(新型飛行機の初公開)が行われました。
2015年2月20日の徳島新聞は次のように報じています。
MRJ 5月29日初飛行 三菱航空機 調整
ーー(略)−−
MRJは全日本空輸や日本航空、米航空会社などから計407機を受注。小型旅客機市場は今後20年間で5000機の新規
需要が見込まれており、初飛行が成功すれば、海外航空会社を中心に受注に弾みがつきそうだ。
ーー(略)−−
飛行試験などを重ね、機体の安全性を国土交通省が認証する「型式証明」を取得。2017年に全日空に発納入する予
定だ。
続いて、4日後、2015年2月24日付の徳島新聞は【上海共同】の記事を次のように載せています。
中国製旅客機 年内にも市場投入 MRJのライバルに
中国が悲願の国産ジェット旅客機の市場投入で最終段階に入った。小型ジェット旅客機「ARJ21」(90席)は年内にも
中国の航空会社に引き渡される見通し。三菱航空機が開発中の日本初のジェット旅客機「MRJ」(三菱リージョナルジ
ェット)とほぼ同じサイズで、将来は海外市場でライバルになりそうだ。−−(以下、略)−−
以下は、少し古いのですが、
2012年5月2日のNHKの時事公論「加速するか国産旅客機開発」(http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/
119570.html)の中からMRJに関連するいくつかの項目を抜き出し、要約したものです。
1)世界の旅客機の需要は今後20-30年にわたって、平均5%以上拡大し、2030年には2.7倍の大きさになるといわれて
いる。
2)大きさ別には座席数100以上の中型機、250以上の大型機のシェアはボーイング社とエアバス社が独占、座席数
100未満の小型機は今後20年間の需要予測は5000機以上とも言われているが、既存のカナダのボンバルディア社、
ブラジルのエンブラエル社に続いて、ロシア、中国も参入を目指しており、日本を含めて5陣営が入り乱れる激戦区
である。
3)日本の航空機産業は第二次世界大戦後、航空機の研究や製造が禁止されたため、大きく後退した。
4)その間、航空機の技術者たちは、自動車や家電産業の中でかろうじて技術をつなぎ、加工技術や材料技術を育て、そ
れらを生かして、再び国産旅客機に挑戦しようとしている。
5)一般的な採算ラインは400−500機といわれている。日本は後発であるがゆえの優位性(最新技術を導入して、燃費
効率がよく、CO2排出も少なく、静かな機体を作れる)を発揮して、小型機の国際市場が固まらないうちに、積極
的に食い込む必要がある。
6)MRJの成功はそのまま日本の真の技術力の証明に繋がる意味を持っている。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2015.3.11)
2)三大事故
「失敗学のすすめ」は発売と同時に購入して読んだ本です。その中に記載されている三大事故についてはご存知の方も多いと思います。以下の内容は徳島県技術士会報に投稿した拙文「失敗に学ぶ」(Vol.9(2001),p.15〜21)から抜粋したものです。
失敗学の提唱者である畑村洋太郎の著書「失敗学のすすめ」(講談社,2000)の中に社会を発展させた三大事故が挙げられている。当時、これらの事故はそれぞれの分野において未知の領域に潜んでいた重大な欠陥であった。それぞれの事故原因の詳細な調査により、内在していた重大な欠陥が解明された。そして、これらの結果はその後のそれぞれの技術分野における研究・改良や安全性の向上に貢献した。そういった意味で、歴史に残る大きな事故であったが、社会を発展させた事故として語り継がれている。
一つは米国ワシントン州のタコマ橋が完成からわずか4ヵ月後、秒速19mの横風を受け崩壊した1940年の事故。
二つ目は世界初のジェット機デハビランド・コメット機が1952年就航したが、わずか2年後にフライト途中で二機の飛行機が相次いで空中爆発を起こした1954年の事故。
三つ目はアメリカが大量製造したリバティ船と呼ばれる約1万トン程度の輸送船が就航まもない1942〜46年にかけて発生した破壊事故、がそれである。
機械工学を専攻した筆者も学生の1970年代にはこれら三つの事故の原因が自励振動、金属疲労及び脆性破壊であることを学んだ。
特に脆性破壊については当時の研究テーマに関連する内容も含まれておりこれらの文献を読んだことを思い出す。リバティ船の破壊事故は北洋における寒冷期に集中していた。リバティ船の事故については大規模な調査、研究を行って原因究明が行われ物理的な問題としては溶接の欠陥、低温脆性などが挙げられ、特に温度が低くなると金属そのものが脆くなる低温脆性が主原因であると判断された。
畑村は「失敗体験が真の技術の理解を生む」と述べている。人は誰でも失敗をするものである。その失敗体験を真の科学的理解にまで高めることができればベストであるが、それ程簡単ではない。ならば、せめて一般化された体験にまで高めて失敗体験を共有の財産として有効に活用できないものか。有効活用が実現すれば、異常時の対応も、「単に元に戻しただけ」から「再発しない、若しくは、再発しにくい処置を施して元に戻す」ことが可能となる。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2012.11.27)