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25)臨機応変(孫子 九変篇)
品質の良い製品を安く、タイムリーに供給しなければ顧客の信頼は得られません。このため、ものづくりの現場では、人や機械、材料などの工場の資源を経済的に運用し、生産合理化を目指しています。
しかし、ものづくりの現場ではいろいろなトラブル、事故が発生しています。原因が究明され、再発防止対策が講じられているものがある反面、新たな原因による新たなトラブルが跡を絶たないのが現実ではないでしょうか。これらについては対策が不完全であったと反省し、新たに対応すればよいと思います。対策が的確になればトラブルは時間と共に減少し、生産性の向上に繋がることになります。
そこで、必要になるのは発生した事故や品質トラブルの再発防止或いは未然防止対策です。応急処置や恒久対策など状況により対応は異なります。
中国、呉の時代、孫武が説いた兵法書『孫子』(13篇)の第8篇は「九変 篇」です。「九変 篇(一)」には、常法にこだわらず事変に臨んでとるべき九とおりの処置について、以下のように記載されています。(出典:「孫子」(金谷治訳注))」
「孫子曰く、凡そ用兵の法は、高陵には向かうこと勿かれ、背丘には逆(迎)うること勿かれ、絶地には留まること勿
かれ、佯北には従うこと勿かれ、鋭卒には攻むること勿かれ、餌兵には食らうこと勿かれ、帰師には遏むること勿なれ、囲師には必らず闕き、窮寇には迫ること勿かれ。此れ用兵の法なり。」
このように孫子は常法にこだわることなく、敵の兵や地形などの状況に応じて用兵を変化させています。この臨機応変の処置こそ、戦わずして勝利を獲得するための戦争の原則といえます。
ものづくりの現場では人や機械、材料などの工場の資源を経済的に運用し、生産の合理化を目指しています。そして、ものづくりの現場は戦場ではないのですが、事故や品質トラブルが発生した場合には、臨機応変の処置が求められます。 臨機応変の処置を誤ると事態が急激に悪化することがあります。「嘘をついたり、隠したり、辻褄合わせ」をすることなく、臨機応変に適切な処置をしなければなりません。
ここでは、臨機応変の処置をする際、留意すべきポイントをいくつか紹介します。
1)職場環境
①顧客ニーズなどの変化に対応できているのか?
②良好なコミュニケーション、相互理解など、風通しの良い職場になっているか?
③嘘をつかない、隠さない、辻褄合わせをしない、正直で誠実な思考と行動ができているか?
④新たな価値基準を提案する能力を備えているか? など。
2)ものづくりの現場
①作業標準とおりの作業をすれば本当に問題ないのか?
②ハード、ソフトは現状のままで問題ないのか?
③作業者のスキルに問題はないのか?
④保全の方法に問題はないのか? など。
なお、作者の孫武については諸説あるようですが、wikipediaには次のように記載されています。
「金谷治は、『孫臏兵法』に「孫氏の道」とあることから、孫武を中心にした孫氏学派のような兵法家集団がおり、
今の孫子兵法は孫武の作に兵法家たちが付加して成立したものだと考えており、天野鎮雄は、孫子兵法の重複部分を
削ったものが、おそらく孫武の真作に近い部分ではないかと考え、「原孫子」を推定している。」
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2014.3.25)