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9)真に知るとは(論語・為政編)
孔子は、知らないことまで知ったかぶりをする弟子の子路(由)を次のように諭しています。
子 曰、「由、誨二女 知一レ之 乎。知レ之 為レ知レ之、不レ知 為 不レ知。是 知 也。」
(論語・為政編)
子曰く、
「由、汝にこれを知るを誨へんか。これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり。」と。
(出典:わかりやすい論語・孟子(鎌田正))
孔子は「真に知る」とは、自分の知っていることは知っているとし、知らないことはまだ知らないことであると明確に区別してわきまえることだと言っています。
筆者は安全情報メモ20)ものづくりの現場で失われたものの中で次のように総括しました。
2000年に失敗学の提唱者である畑村は「失敗体験が真の科学的理解を生む」流れを図1のように表現しました。
そして、「ある失敗を次の失敗の防止や成功の種に結びつけるには失敗が起きるに至った原因や経過などを正しく
分析した上で、知識化して誰もが使える知識として第三者に情報伝達することが重要なポイントとなる」と指摘し
ています。
また、日本品質管理学会の複合技術領域における人間行動研究会では ヒューマンエラーや標準不遵守に起因する
事故の未然防止のための従来の方法を整理するとともに、必要に応じて新しい手法の開発を行い、これらをパッケ
ージ化された方法論として体系化することをねらいとして活動し、2002年には最終報告書「人間行動に起因する
事故・品質トラブルの未然防止のための方法論の体系化」をまとめています。
これらに共通しているのは失敗(事故やトラブルなど)の本質(真実)を見抜く確かな眼が必要であるという視点では
ないでしょうか。IT技術の発展により誰もが簡単に世界中から欲しい情報を手に入れることができるようになりま
した。この行為は特別に責められるものではありません。しかし、入手した情報を安易に利用することにより生じ
る弊害があることを忘れてはなりません。本来、知識や経験は努力して、苦労して身につけるべきものです。真偽
は元より本質を見抜く努力を怠るとそのつけは自分に返ってくるでしょう。今、正に、組織を構成する個々の知的
レベルが試されています。バブル崩壊以降の失われた10年(あるいは20年)の間に、ものづくりの現場で失われた
「本質(真実)を追求する意欲」を復活しなければなりません。
知らないことは知るように努力をしなければなりません。例えば、聞いてわかることは聞く、調べてわかることは調べる努力を怠ってはならないのです。二千数百年前に東洋に現れた偉大な人物、孔子の言行を集めた『論語」は現代を生きる我々が読み返すべき良書の一つではないでしょうか。
当事務所では人間行動に起因する事故・品質トラブルの未然防止をお手伝いします。また、ものづくりの現場の皆様の声を真摯に受け止め、ものづくりの現場における労働安全の構築と品質の作り込みをサポートします。 (2013.7.24)